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学費の値上げ論 国立大の経営支えるのは誰か

読売新聞 / 2024年6月27日 5時0分

 国立大学の経営が厳しさを増し、学費の値上げ論議も盛んだ。大学教育の充実のためには、誰がその費用を負担すべきなのか。官民を挙げて議論を深めるべきだ。

 国立大の授業料は、文部科学省の省令で年間53万5800円を標準額とすると決められていて、大学の裁量で最大20%まで増額できる。2019年度以降、東京工業大や一橋大など首都圏の7校が独自に値上げしている。

 東京大も、これまで標準額に合わせていた授業料を25年度から現行の1・2倍にあたる64万2960円にすることを検討している。学生からは反発の声が出ているが、正式に決まれば、全国の国公立大に波及する可能性がある。

 人件費や研究費に充てられる国の運営費交付金は、減少傾向が続いている。これに光熱費の高騰などが追い打ちをかけた。全86校が加盟する国立大学協会は「もう限界」と、危機的な財政状況を訴える異例の声明を発表した。

 世界に通用する人材を育成し、質の高い教育研究活動を続けるには、学費の値上げもやむを得ないという考え方もあるだろう。

 ただそれは、経営努力を尽くすことが大前提だ。安易な値上げが認められないのは当然である。

 企業との共同研究を増やして、研究費を分担してもらったり、大学発ベンチャー(新興企業)で資金を獲得したりするなど多角的な取り組みが欠かせない。社会から広く寄付を募ることも大切だ。

 学費の値上げに踏み切る場合でも、経済的に困難な学生の進学機会を確保するため、奨学金や授業料免除といった負担軽減策の拡充と一体であるべきだ。

 今年3月には、中央教育審議会の部会で、委員の伊藤公平・慶応義塾長が150万円に上げるべきだと発言した。3倍もの値上げは現実的とは言い難いが、教育を受ける学生の「受益者負担」という観点で一石を投じた。

 大学教育の費用をどう負担するかは、様々な考え方がある。フランスは「大学は無償」として多額の税金で賄っている。一方、アメリカのように、受益者の学生が高額の学費を負担する国もある。

 日本の大学入学者数は、40年代に入ると今より2割以上も減る見通しだ。大学の経営は一層厳しくなるとみられている。

 高度な知識と技能を持つ人材の育成は国家の根幹に関わる問題だ。政府や教育界、産業界を挙げて、財源の問題も含めた大学のあり方を検討する必要がある。

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