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「柔の心」日仏で育む…競技人口は日本の4倍以上、内股指導の井上康生「日本に使わないで」

読売新聞 / 2024年6月27日 9時47分

フランスの柔道家らを前に、技を披露する井上さん(中央)(4月18日、神奈川県平塚市で)=山田博文撮影

 開幕まで26日であと1か月となったパリ五輪の開催国フランスで、柔道はひときわ高い人気を誇る。競技人口は発祥国・日本の4倍以上だ。数々の名勝負を繰り広げてきた「永遠のライバル」は長年、指導を通じて交流を深め、 切磋琢磨 せっさたくましてきた。大会では熱戦が期待される。(長沢勇貴)

井上康生さん「最高の結果を」

 4月18日、シドニー五輪金メダリストで、東京五輪で柔道男子の代表監督を務めた井上康生さん(46)が、東海大湘南キャンパス(神奈川県平塚市)で、フランス柔道連盟所属の指導者ら約30人に技術指導した。現役時代に得意技だった内股の掛け方を手ほどきし、「日本相手に使わないで」と冗談で盛り上げた。

 指導は、連盟の日本での研修の一環。柔道歴40年のブラネス・ノリさんは「憧れの人から教えてもらいうれしい」と感激。連盟役員リオネ・ミシェールさんは「スポーツと武道の違いなども学べた」と喜んだ。

 フランスは、ロンドン、リオデジャネイロ両五輪金メダリストのテディ・リネール選手らを輩出。東京五輪で初めて実施された混合団体で金メダルを獲得した。

 「フランス柔道の父」と呼ばれるのは、兵庫県姫路市出身の柔道家・川石 酒造之助 みきのすけ(1899〜1969年)だ。戦前に渡仏し、白帯から黒帯の間に、黄やオレンジ、緑などカラフルな色の帯で上達の程度がわかる指導法を考案。習熟度が色によって分かるため子どもの意欲を刺激し、現在も活用されている。

 「フランスに伝わった柔道から、今の日本が学ぶ点は多い」と全日本柔道連盟の中里壮也・専務理事は指摘する。フランスでは、相手を尊重する態度など礼儀作法を学ばせる目的で、親が子どもを柔道教室に通わせるのが一般的で、競技人口は約55万人だ。

 一方、日本では近年、勝利至上主義が問題となり、保護者や指導者が審判に罵声を浴びせたり、選手に無理な減量を強いたりすることもあったという。国内の競技人口は2004年の約20万人から、22年には約12万人と4割も減少している。

 全柔連は同年から小学生の全国大会を中止。23年策定の長期育成指針に「伝統的な所作を守ろうとすることで、人間形成につながる」と記し、柔道の基本に立ち返る姿勢を明確にした。

 今年3月、フランスの柔道場を訪れたという井上さんは「誰もが楽しそうに柔道をしている姿が印象に残った。日本の柔道がフランスにとって価値のあるものであり続けるためにも、日本代表は『自他共栄』の精神で最高の結果を残してほしい」と注文をつけた。

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