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「無線指紋」DB化で偽の位置情報を見破る…防衛装備庁や東大発新興企業で研究始まる

読売新聞 / 2024年6月27日 5時0分

 防衛装備庁と東京の新興企業が、全地球測位システム(GPS)などが提供する位置情報の改ざんを見破る新技術の研究に乗り出したことがわかった。カーナビや本人認証などで幅広く利用されている位置情報の改ざんは、社会的な混乱を招く。ミサイルの誘導など、安全保障にも幅広く活用される位置情報を守るため、防衛と民生の双方で使える「デュアルユース」技術として実用化を目指す。

 研究は、東京大の研究者が創業し、位置情報の解析を行っている新興企業「ロケーションマインド」が担う。装備庁は、将来的に防衛技術への応用が期待できる民生技術の基礎研究などを支援する安全保障技術研究推進制度の枠組みで、2023年度から4年間で5億7600万円を支援する。

 GPSなどの衛星測位システムは、衛星の信号を無線で地上の受信機に送り、送信時間と受信時間の差で、受信機と衛星までの距離を測定。衛星4基以上からの信号を受信し、地上の位置をほぼ正確に算出できる。

 ただ、攻撃者が偽の信号を地上で生成・発信し、攻撃対象に受信させることで位置情報を改ざんできる。居場所を悟られないよう、攻撃者が自身の位置情報を改ざんするケースもある。

 そこで装備庁と同社は、新技術で対抗手段を研究する。同じ構造の衛星でも、製造された環境や時期で、無線の特徴にわずかな違いが出る。この違いを人間の指紋のように識別し、衛星の「無線指紋」としてデータベース化。本物と照合することで改ざんを見破り、正しい位置情報を表示する。

 米国の調査研究機関によると、ロシアが関与した疑いのある偽の信号がウクライナで検出されたり、違法操業を行う中国漁船の位置情報が改ざんされていたりする事例が確認されている。

 日本は、電子署名で改ざん対策を進めている。ただ、地上で受信した本物の信号の位置情報をコピーし、実際とは異なる場所から再送信して偽情報を受信させる手法は見抜くことが難しい。

 この手法は、まだ表面化していないが、今後主流になる可能性がある。新技術なら改ざんを見破ることが可能といい、同社は今年度中に、測位信号の無線の波形データを大量に記録し、「無線指紋」を検出する研究を本格化させる。

 ミサイルや無人機の誘導にも使う位置情報が改ざんされれば、安全保障に影響が出る恐れがある。デュアルユース技術の研究を強化したい装備庁は今秋、「防衛イノベーション技術研究所」を新設する方針で、同社への支援も引き継ぐ。

 同社の藤田智明取締役は「早めに対策を講じ、国防や長期的な社会インフラの健全化に貢献する」と話す。

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