1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

文学座の横田栄司、「オセロー」で復帰…いったんは断ったが「ポンコツなりの役立ち方があるんじゃないか」

読売新聞 / 2024年6月27日 12時53分

今年1月に上演された三谷幸喜作・演出「オデッサ」には、声で出演した。「『これぐらいならできる?』と三谷さんが声をかけてくれた。段階を追って復帰できるよう色々な人が気遣ってくれたことに、本当に感謝しています」=青木久雄撮影

 2年近く休養していた文学座の横田栄司が、俳優活動を本格再開させる。復帰作はシェークスピアの4大悲劇の一つ「オセロー」。名匠・鵜山仁が演出する劇団本公演でタイトルロールに臨む。(小間井藍子)

 2022年9月、出演が決まっていた舞台「欲望という名の電車」を心身の不調のため降板した。「俳優をやめよう」と求人広告を眺める日々を送っていたところ、劇団の先輩、鵜山から声をかけられた。「オセローやりませんか?」と。

 「自信もないし、せりふの覚え方も忘れたので無理です」。そう断ったところ、鵜山は「もうちょっと考えてみて。別の作品でもいいし、何なら土壇場で降板しちゃってもいいから」と結論を先延ばしにしてくれた。

 「すごい人だなと。演劇に対してあきらめない人は人間に対してもあきらめないんだなと思った」

 最終的に出演を決めたのは昨年9月だった。「健康になったから」「芝居以外にできることがないから」という理由だけでなく、休養中、劇団の仲間に支えられた感謝の思いが大きかった。「自分は外部出演が多くて劇団の本公演にあまり出てなかった。ポンコツなりの役立ち方があるんじゃないかって」

 将軍オセローは、美しい妻デズデモーナと相思相愛だが、信頼する家臣イアーゴーの裏切りによって追い詰められていく。「血の気の多い人物です。人一倍嘆きますし、涙もこぼす。そうかと思えば愛情表現も過剰で必要以上にキスをする。演じてみて感情の起伏の幅に驚かされた」と語る。

 デズデモーナを演じるのは今年、座員に昇格したばかりの若手、sara。すでに劇団外でも大活躍しており、横田はその逸材ぶりを二刀流のメジャーリーガーになぞらえ「ひそかに『文学座の大谷翔平』と呼んでいる」という。「芝居もできて歌もできる。日本のミュージカル界を変える存在。入ってきた時から劇団みんなで大事に育ててきた」

 そしてイアーゴーは同期の実力者、浅野雅博だ。「やっぱりお互い、何を考えてどこで苦しんでいるかが分かる。同じ劇団で育って心の共通言語みたいなものがあるから」。新人からベテランまで、劇団の総力を結集させた、極めつきの舞台が期待できそうだ。

 鵜山演出のみならず、蜷川幸雄演出のシェークスピア舞台の常連だった。シェークスピアはお手の物と思いきや「毎回新しい宇宙だと思って立ち向かわないとはね返される」と語る。特にせりふの膨大さ、独特の言い回しには苦労したという。「でも、ずっとやっているとせりふを考えなくても口が勝手に動き出す時がやってくる。これを勝手に『シェークスピアハイ』と呼んでいます。いつ来るか分からないけど、そこを目指して練習を重ねていきたい」

 劇団の養成所に入ったのは1994年。30年にわたって様々な先輩から薫陶を受けてきた。特に忘れられないのは、2007年に亡くなった名優・北村和夫とのやりとりだ。

 01年前後に北村のせりふ覚えの相手役としてついて回っていた時、北村から詩集を5、6冊手渡されたことがあった。「『俳優はいつも心に詩を抱えて生きていなさい』と、その場で詩を読み上げさせられた。なんか、格好いいなって。役者をやる上で自分の中で核となって残っています」

 長年、舞台を中心に活動してきたが、22年に三谷幸喜脚本のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で演じた和田義盛が好評を博し、知名度は全国区に。「オセロー」での舞台復帰が発表され、今年5月にチケットが売り出されると即日完売した。文学座によると、これほどの反響の大きさは04年に当時座員だった内野聖陽が主演した「モンテ・クリスト伯」以来という。

 「本当にありがたいです。まだ、稽古半ばで思い通りの自分にはなれていませんけど、今改めて、役者って楽しいなと思います」

 訳は小田島雄志。東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターで29日から7月7日まで。追加公演のチケットが販売中。(電)0120・481034。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください