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映画化「ルックバック」作者・藤本タツキさんの原点、恩師が語る青春…才能つぶさず「控えめな言葉にしておいてよかった」

読売新聞 / 2024年6月29日 13時6分

観光情報発信コーナーに掲示された映画のポスター(27日、秋田空港で)

 人気マンガ「チェンソーマン」などで知られる秋田県にかほ市出身のマンガ家、藤本タツキさんが古里を舞台に描いたとされる「ルックバック」のアニメ映画が28日、公開される。本作には創作の苦しみや素晴らしさ、その間で揺れる葛藤も描かれる。高校時代の藤本さんを知る2人へのインタビューを通じ、その創作の原点を探る。(田辺里咲、永山太一)

 矢島高の猪股憲一教諭(50)は2008〜16年、藤本さんの母校・仁賀保高で情報担当として教べんを執り、藤本さんの担任を務めた。生徒会の役員でまじめな生徒だったが、カメラを向けるとおどけたポーズを取るなど、「こういうことをやったら面白いかな、と常に考え、行動に移してしまえる生徒だった」と振り返る。

 当時からノートのような厚さのマンガを描いて友達に見せていたが、「先生はだめ」と見せてもらえなかったという。マンガ家になりたいとは聞いていなかったが、地元の油絵教室で油絵に関心を持ち、進路相談では芸術系の大学への進学を希望していた。「その分野で大成するのは大変だよ」。そう伝えたが、一世を 風靡 ふうびするマンガ家になった今、「下手すれば才能を潰してしまったかもしれない。控えめな言葉にしておいてよかった」と振り返る。

 卒業後、本人から「ファイアパンチ」の単行本が学校に贈られた。「反対しづらい前例ができてしまった」と言いつつ、教え子の活躍に笑顔を見せた。

 秋田市のCG制作会社「ゼロニウム」社長の伊藤茂之さん(52)は、仁賀保高の外部講師として週に4コマ、絵コンテの描き方や3DCGの作り方を藤本さんに教えていた。「高校生で彼のような発想ができる人は初めて見た」と当時から一目置いていたという。

 授業の課題で制作した「ポイ捨てはダメ?」というCG映像作品では、路上に捨てられた缶がカラスにさらわれ、マフィアの抗争や、果ては宇宙戦争に巻き込まれ、最後は缶が地球を救う。「ストーリーの構築が卓越していて、うまく言い表せない、得体の知れないすごさを感じた」と振り返る。

 発想力やストーリー展開のほか、集中力も飛び抜けていた。CG映像作品では、多くの素材を集めて編集し、毎秒30コマを2分半分作らなければならない。「細かい作業にも黙々と取り組んでいた」という。

 ただ、マンガ家になったと知ったのは、もともと好きだったマンガ「ファイアパンチ」のポスターが仁賀保高に貼ってあるのを見てからだ。高校の教員から「その作者が藤本君だよ」と教えてもらい、驚くとともに「ああ、今思えば確かにそうかも」と納得もした。3DCGを経験しているマンガ家は多くはないとみられ、「3DCG制作で培われたカメラワークや空間把握能力がマンガに生かされていればうれしい」と語る。

 「チェンソーマン」はもちろん、「ルックバック」のファンともいい、「この年齢で自伝的な作品が映画化されるところまで行ってしまったか」と感慨深げに語る。映画は複数回見に行くつもりという。

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