3年前フライングの村竹ラシッド、今季世界6位の好記録でリベンジ…「世界へ逆襲する」
読売新聞 / 2024年7月1日 9時9分
陸上・日本選手権最終日(30日・新潟デンカビッグスワンスタジアム=読売新聞社後援)――パリ五輪代表選考会を兼ねて行われ、男子110メートル障害は村竹ラシッド(JAL)が13秒07で初優勝、女子100メートル障害は日本記録保持者の福部真子(日本建設工業)が12秒86で制し、共に初の五輪出場を決めた。女子走り幅跳びは秦
素早い脚さばき 後半一気
パリへの切符をつかんだ男子110メートル障害の村竹は、トラックに両膝をついて天を見上げた。「この3年間、自分の無力さ、世界との壁、色々なものが自分を苦しめた。やっとそれから解放されてホッとしている」と、感無量の表情を浮かべた。
東京五輪代表選考会だった2021年の日本選手権決勝で、フライングのため失格となり、代表入りを逃した。補欠で日本選手団に同行し、無観客の国立競技場で試合を観戦。五輪の雰囲気を肌で感じ、「絶対にパリには出てやる」と、トレーニングに励んできた。
千葉県出身で父親はトーゴ出身。身長1メートル79は、世界の舞台では小柄に見える。13秒04の日本記録を共に持っている順大の先輩、泉谷駿介(住友電工)と同様、ハードル間の素早い脚さばきを磨いてきた。この日も6台目を越えた辺りでスーッと後続を引き離したように、後半の伸びが持ち味だ。
13秒07は今季世界6位に相当する好タイム。22年の世界選手権では予選敗退と壁にはね返されたが、五輪の舞台では成長した姿を見せるつもりだ。
「パリでは決勝に進出して、メダル争いにも加わりたい。この3年間積み重ねてきたものを糧に、世界へ逆襲できたら」。22歳の伸び盛りのハードラーは、力強く誓った。(田上幸広)
福部も初切符…女子100障害
昨年は涙に暮れた選考会で、「リベンジ達成」と笑顔がはじけた。女子100メートル障害決勝を福部が制し、初の五輪切符をつかんだ。
2022年に12秒73の日本記録を作り、迎えた昨年の日本選手権はまさかの4位。世界選手権代表を逃した。今年は準決勝で五輪参加標準記録を突破したが、「同じ失敗をしたらどうしようと寝られなかった」。だが、スタートラインに立つと「少しのプライドと挑戦精神」を胸に秘め、序盤から先行して逃げ切った。
苦汁をなめて自分と向き合った。「肉は食べずに魚だけ。脂質をカットし1日2食」。肉体改造に取り組むと、日本記録達成時から体脂肪率は1%減の7%、体重は2キロ増の59キロになった。筋力の増した絞れた体で、推進力を取り戻した。
22年世界選手権では準決勝に進んだ。「12秒7台では、けちょんけちょんにされる。12秒6台で世界に食らいつく」。さらなる飛躍を狙う。(井上敬雄)
秦貫禄4連覇 五輪へ
女子走り幅跳びの秦は優勝が決まった後の6回目、さらに記録を伸ばす6メートル56を跳んで貫禄を見せた。昨年のアジア選手権で日本記録の6メートル97を跳び、五輪参加標準記録を突破していた。これまで2度の世界選手権では予選敗退に終わったが、「スカッとする跳躍をして、心の底から笑える五輪にしたい」と気合を入れた。
坂井連覇…男子100
男子100メートルを10秒13で制した坂井は「勝ちきれたことは成長。地力は上がっている」。抜群のスタートで先行し、2、3位との0秒01差の接戦を制した。今季は故障で出遅れたが、個人種目での五輪出場に望みが出た。「どうなるか分からないが、もう一段ギアを上げないと」と気を引き締めた。2位の東田旺洋(関彰商事)は個人での五輪代表に前進し「自分のレースをやりきれた」。有力候補から一転、個人での出場が微妙になった3位の柳田大輝(東洋大)は「正直受け止めきれない」と涙した。
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