NATO、日韓豪NZと連携強化目指す…事務総長「中国が我々の価値観に挑戦」
読売新聞 / 2024年7月1日 5時0分
【ブリュッセル=酒井圭吾】北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長が27日、本紙の単独インタビューに応じた。7月9日から米ワシントンで開催されるNATO首脳会議では、中国の脅威をにらみ、軍備管理や技術開発、サイバー攻撃対策で日本を含むアジア太平洋地域4か国と連携強化の合意を目指していると明らかにした。
首脳会議の主要議題は▽ロシアに侵略されるウクライナ問題▽NATOの抑止力と防衛策▽日韓、ニュージーランド、オーストラリアのアジア太平洋地域4か国との連携強化――の三つだと明言した。
NATOはウクライナ侵略開始後、専制国家への警戒から4か国との連携を深め、今回の首脳会議に各首脳を招待している。ストルテンベルグ氏は「NATOは中国を敵対国とは見なさないが、我々の価値観や利益、安全保障に対して挑戦をしかけている」と指摘した。中国は「台湾や近隣諸国、南シナ海を脅かしている」とも語った。
ウクライナ侵略でも、ロシアは中国の最新技術や電子機器の輸出で支えられ、無人機やミサイルを製造しているとし、「中国が、欧州にとって第2次世界大戦以来最大の戦争をあおっている」と批判した。対中圧力の強化とアジア地域の安定のため、「(4か国との)パートナーシップを内容あるものにする必要がある」と述べ、具体的な協力策を深化させる見通しを示した。
ただ、台湾危機が実際に起きた際の具体的な行動には「NATOは北米と欧州の同盟としてあり続ける」として慎重な姿勢を示した。昨年にはNATOが東京に連絡事務所を設置する案も出たが「今回の首脳会議でも決定することはない」とし中国に過度な刺激を与えたくない本音ものぞかせた。
加盟国が独自に決めている現行のウクライナ支援策については「加盟国が負担を公平に分担する制度があれば長期支援につながる」と述べ、首脳会議で仕組みの見直しを決めたいとの意向を示した。
ロシアが核の使用条件緩和を示唆しているが「差し迫った脅威はない。NATOが核態勢を見直すほどの必要性は見いだせない」と述べた。核抑止力の維持策として核運用で利用する米戦闘機をF16からF35に置き換えるプロセスは「従来通り進めている」と明かした。
イェンス・ストルテンベルグ氏 ノルウェー出身。2000〜01年、05〜13年の2度、ノルウェーの首相を務めた。ロシアが14年3月、ウクライナ南部クリミア半島の編入を発表した約半年後にNATO事務総長に就任。22年に退任予定だったが、ウクライナ侵略で事務総長の任期が延長された。調整能力にたけ、失言も少ない。65歳。
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