能登地震半年 いまだ見えない復興への道筋
読売新聞 / 2024年7月1日 5時0分
能登半島地震の発生から半年となる。被災地では、損壊した建物の解体が今も進んでいない。国は、復興が遅れている要因を一つずつ取り除き、地域の再生を後押しすべきだ。
元日の地震で大きな被害が出た石川県の奥能登地方では、倒壊した家屋や倒れたビルが今もそのまま残っている。まるで半年間、時が止まっていたかのようだ。
長く続いた断水はほぼ解消し、道路も復旧しつつあるが、なお多くの人が避難所生活を余儀なくされている。ホテルなどに2次避難を続けている人も少なくない。
避難生活で体調を崩し、命を落とした災害関連死は52人に上る。地震の直接的な被害で亡くなった人を合わせると、犠牲者は熊本地震を上回る281人となった。
暑さの厳しい時期を迎え、避難生活は過酷さを増すだろう。全ての仮設住宅が完成する8月まで、自治体は、被災者の健康管理に十分留意してもらいたい。
壊れた建物が放置されているのは、自治体が所有者に代わって解体・撤去を行う「公費解体」が進んでいないためだ。これまで所有者から2万棟の申請があったが、解体が完了したのは、わずか900棟にとどまっている。
解体する家屋の現地調査や、所有者への連絡を行う自治体職員らの人手不足が大きな要因だ。解体前には所有者の立ち会いが必要になるが、その所有者も被災地外に避難していて、日程調整などに手間取るケースも目立つ。
奥能登は、都市部から遠い半島の先端にあり、現地には宿泊場所も少ないため、解体の作業員を集めるのにも苦労している。
熊本地震では、発生から半年の段階で、4000棟以上の解体が終わっていた。解体が進まなければ、街は再生できない。
政府は現地に支援の拠点を設けるという。自治体間の連絡調整や職員の応援派遣など、国が先頭に立って対策を講じるべきだ。
能登の被災地では、この半年間に故郷を離れ、別の場所で生活を再建する人も増えている。復興が遅れている現状に、不安を感じているからではないか。
被災者が希望を持って前に進むには、街の将来像を示すことが重要だ。漁業などの産業や、伝統工芸の輪島塗をどのように再生させるのか。自治体は、具体的な復興計画の策定を急いでほしい。
能登は地震前から過疎の問題を抱えている。魅力ある地域をつくり、いかに人を呼び込むか。再生の方向性を十分に議論したい。
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