NATO事務総長、トランプ氏が大統領再任でも「ウクライナ軍事支援続ける」…米後退への備えも示唆
読売新聞 / 2024年7月1日 7時37分
【ブリュッセル=酒井圭吾】北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長は本紙との単独インタビューで、ロシアの侵略を受けるウクライナへの関与を強め、加盟国の政権に変化があっても揺るがず軍事支援を続ける体制を構築する重要性を強調した。
ストルテンベルグ氏は「ロシアのプーチン大統領は、我々(NATO)が『手を引く』と信じている。戦場で(早々に)勝てないと気付かせれば、戦争は早く終わる」と述べた。加盟国や日本などのパートナー国には「各国が(支援から)手を引かないという明確な誓約を示すことを期待している」と訴えた。
戦闘長期化による支援疲れが各国に広がっていることを意識した発言だ。
フランスやドイツでは、支援に消極的な右派勢力が伸長する。最大の軍事支援元である米国では、11月の大統領選でNATOに批判的なトランプ前大統領が世論調査でリードしている。ストルテンベルグ氏は、トランプ氏が再任しても「米国にはウクライナに対する超党派の強い支持がある。誰が大統領に選出されても、米国はNATOの強力な同盟国であり続けるだろう」と述べた。
ただ、米国が担うウクライナ兵の訓練や装備品輸送などの兵たんの調整で「NATOが主導的な役割を果たすことになる」と述べ、米国の関与が後退するシナリオに備えていることも示唆した。
NATOは6月、ドイツ西部ウィースバーデンの米軍施設に要員700人を配置し、直接調整役を担うと明らかにしている。軍事支援金の規模や負担の分担は、「共同で約束するべきだ」と述べた。各国の政治情勢に左右されないようNATOに資金を集める仕組みの創設を見据えた発言とみられる。
ただ、NATOが関与の度合いを引き上げても「支援は加盟国から出される。NATOが戦争の当事者にはならない」とも強調した。マクロン仏大統領は6月、ウクライナに軍事教官を派遣する方針を示した。バルト3国やポーランドも賛同しているとみられるが、「ウクライナに(NATOとして)戦闘部隊を置くことはない」と明言し、ロシアとの全面対立を避ける意向も改めて強調した。
10月1日に次期事務総長に就任するオランダのマルク・ルッテ首相については「(現在のNATOの方針を)引き継ぐと確信している」と述べた。
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