ロシア寄りのハンガリーがEU議長国に…政策議論で主導的役割、欧州議会は信頼性を疑問視
読売新聞 / 2024年7月1日 20時54分
【パリ=中西賢司】ロシア寄りの立場を鮮明にしているビクトル・オルバン首相が君臨する東欧ハンガリーが1日、欧州連合(EU)の議長国になった。12月末までの任期中、議題設定などEUの政策に関する議論で主導的な役割を担う。ロシアに侵略されるウクライナへの軍事支援に反対するなどEUを振り回してきた「異端児」の采配に警戒感が広がっている。
「プーチン大統領の腹心」と呼ばれるオルバン氏が率いるハンガリーの右派政権は、これまで以上にEUの活動にブレーキをかける――。ドイツのニュース専門テレビNTVは欧州議会議員の懸念を紹介しながら、「オルバン政権は半年間、EUを揺るがしかねない」と伝えた。
ハンガリーが半年交代の輪番議長国をベルギーから引き継ぐのは、EUの主要機関のうち、閣僚級のEU理事会で、立法権を持つ。経済など分野別に開かれる理事会で、ハンガリーの各担当大臣が法案や予算の採択、政策を巡る協議を取り仕切る。欧州議会は昨年、「ハンガリーが(議長国の)任務を信頼できる形で果たすことができるのか疑問だ」との決議を採択した。
オルバン氏は6月のインタビューで、EU内で主流派の中道勢力について「我々が考える欧州はこれらの政党が合意しているものとはまったく異なる」と述べ、対抗心をあらわにした。ウクライナへの軍事支援方針を曲げない「戦争推進連合だ」とこき下ろした。
14年間政権を握り続けるオルバン氏にとって議長国は13年ぶりだ。懇意のトランプ前米大統領を意識してか、議長国としてのスローガンには「欧州を再び偉大に」を選んだ。優先事項には、経済的な競争力向上や欧州防衛の強化、不法移民対策など自国が重視する議題を掲げた。EU拡大では「一貫性」を主張し交渉が始まったばかりのウクライナを特別扱いしないとくぎを刺した。
ハンガリーの独断専行による弊害を懸念する声は根強いが、影響は限定的との見方もある。例えば、外交分野は、EUの外交安全保障上級代表(EU外相)が会合の議長を務めている。ドイツ国際安全保障研究所のカイオラフ・ラング・シニアフェローは「ウクライナや移民など核心の問題は立場を譲らないだろうが、オルバン政権の関心はスキャンダルを起こすことではなく、議長職をこなせると示すことにある」と分析する。
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