「大統領は今や法の上に立つ王だ」…連邦最高裁のリベラル派判事、トランプ氏の免責特権を一部認めた多数派批判
読売新聞 / 2024年7月2日 21時13分
【ワシントン=田島大志】米連邦最高裁が、2021年の議会占拠事件に関連して共和党のトランプ前大統領に「免責」特権が認められるかどうかを争った事件を下級審に差し戻したことで、11月の大統領選前にトランプ氏が同事件で裁かれる可能性はほぼ消滅した。トランプ氏には追い風で、批判材料を欠くことになるバイデン大統領はさらに苦境に立った。
「暴徒を議会に送り込んだ男は有罪となる可能性がある。国民には投票前に答えを知る権利があるが、可能性は極めて低くなった。これは国民への
トランプ氏側にとって「免責」の主張は、大統領選を見据えた裁判の遅延作戦の一環だった。下級審が、最高裁が求めた公的・私的行為の区分けを速やかに審議しても、大統領選までの4か月で確定判決を得ることは困難だ。米メディアは「トランプ氏の大勝利」(AP通信)などと報じた。
トランプ氏は、議会占拠事件関連の他にも3件の事件で起訴されている。不倫の口止め料を不正に処理したとされる事件では5月に有罪評決を受けた。米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏側は今回の最高裁判断を受け、この有罪の取り消しと11日の量刑言い渡しの延期を求める手続きに入った。
就任前の行為とされる不倫口止め料の裁判で免責が認められる見込みは薄いが、トランプ氏は今回の裁判延期により、米民主主義の根幹を揺るがした議会占拠事件を巡る批判をかわしやすくなる。当選すれば自らが指名する司法長官の権限で起訴を取り消すことも可能だ。大統領権限で自身を恩赦する可能性も取りざたされる。
20年大統領選のジョージア州の結果を覆そうとしたとして起訴された事件は今回の最高裁判断の直接の対象とはなっていないが、同様に大統領の立場を利用した行為の是非を争っているため、今回の最高裁判断に関連する訴訟の決着がつくまで初公判が行われないのは確実だ。
今回の判断を巡っては、最高裁の「党派性」も浮き彫りになった。9人の判事はトランプ氏を含む共和党大統領が指名した保守派6人、民主党大統領が指名したリベラル派3人で構成される。3月にトランプ氏の大統領選立候補資格を巡るコロラド州最高裁の判断を覆した際は全員一致だったが、今回の判断は保守派6人による多数意見だった。
リベラル派のソニア・ソトマイヨール判事は意見書で、多数派の判断を「大統領と国民との関係は取り返しのつかないほど変化する。大統領は今や法の上に立つ王だ」と痛烈に批判した。バイデン氏も演説で、同判事に同調し「誰一人、法の上に立つ者はいない。今日の判断で、それは根本的に変わった」と嘆いた。
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