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「脱炭素と産業競争力の強化を同時に推進」「リスクを積極的に取って金融支援し、民間の呼び水に」…GX推進機構・筒井義信理事長

読売新聞 / 2024年7月3日 17時30分

 政府のGX(グリーントランスフォーメーション)戦略の中核機関となるGX推進機構が7月1日、業務を始めた。2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標に向けて、10年間で150兆円を超える官民投資を後押しする役割を担う。筒井義信理事長(日本生命保険会長)に話を聞いた。(聞き手・長原和磨)

非常に遠大な計画、官民連携で

 ――機構の役割や意義について。

 「基本的な役割は、当然脱炭素。ただ、それだけでは意味がないので、産業競争力の強化を進める。この二つを同時に推進していく。そのための中核機関であり、要の組織である。

 まずは金融支援。債務保証や一部出資もある。リスクを積極的に取って、民間の金融機関の呼び水にする。これが時間軸ではまず最初。

 26年度からは排出権取引制度、28年には(企業が排出する二酸化炭素に価格をつける)カーボンプライシング。段階的に業務をステージアップしていく。(政府目標の)50年のカーボンニュートラルを見据えた非常に遠大な計画を官民連携で取り組む。国家課題なので、政府と連携して取り組む」

 ――民間だけではなかなか進まない。

 「働いてきた生命保険会社では、受託者責任がある。預かっているお金に見合ったリスクの取り方を考えなければならない。どの金融機関も一緒だ。自らリスクを取り、過去に実績がないことに取り組むのは、慎重にならざるを得ない。GXは新しい技術を社会が実装すること。過去にないものを作り上げていくということ。民間金融だけでは難しいところがある。機構がリスクを積極的に取って呼び水にしたい。

 リスクを取るにあたっては、具体的な金融支援の基準や制度の枠組みのようなものをしっかり作って、裏付けを整える必要がある。ある種の社会インフラを作っていく。制度の基盤を作るのに等しい仕事だと思う。

 官民連携なので、機構のメンバーは、役所からの出向と民間金融で半分半分だ。民間金融で働く人はリスクの取り方がわかっているが、予見可能性を示すような役割をどう作るか。チャレンジングな課題だと思う」

外部の目線を入れ、公平公正な意思決定

 ――支援の公平性をどう担保するか。

 「企業が取り入れている理念や仕組みを機構にも応用したい。意思決定は理事会が基本になるが、外部有識者の入る運営委員会で外部の目線を入れながら、公平、公正な意思決定をする仕組みも取り入れていく。

 (計画、実行、検証、改善の)PDCAは、ガバナンスとして必要だ。その内容は自主的に開示し、外部目線の意見も取り入れることも必要だ」

 ――政府は、今後10年で官民合わせて150兆円を超える投資を見込んでいる。

 「日本が欧州連合(EU)や米国と していく上で、小さくはないけれども、大きくもない。世界的なバランス感覚の中で、目標にふさわしい規模だ。GX投資は長期で多額になるが、達成感のある仕事だと思う」

 ――日本の産業競争力を高める上で、力を入れる分野は。

 「16分野の中に入ってくるが、鉄鋼、化学、自動車、水素関連が代表選手ではないか」

 ――日本生命でも(環境、社会課題、企業統治に投資する)ESG投資に取り組んできた。

 「普通の投資や融資と比べて、運用リターンが高いということは明確には実証されていない。だが、だからやらないということではない。日本の企業レベルでいうと、世界的にはかなり高い運用をしている。

 (先行する)EUは、国家連合体戦略の様な中で、企業も自ら存亡をかけてGXに取り組んでいる姿勢が鮮明だ。戦争やエネルギー情勢の変化で、(GXへの取り組みが)移行期になっているところもある。

 移行期のESGの取り組みは、もともと日本が主張してきたことで、ふさわしい流れになっている。日本が先導役になれる可能性は高い」

◆筒井義信氏(つつい・よしのぶ) 1977年京大経卒、日本生命保険入社。経営戦略を立案する企画畑の経験が豊富。伊藤助成元社長の秘書も務めた。2011年社長に就任し、18年から会長。社長時代には三井生命保険や豪州の大手銀行「ナショナルオーストラリア銀行」の保険事業を買収するなど、攻めの経営を展開した。23年から経団連副会長。兵庫県出身。

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