旧優生保護法「違憲」、強制不妊で国に賠償命令…最高裁が「除斥期間」不適用で統一判断
読売新聞 / 2024年7月3日 22時33分
旧優生保護法の下で不妊手術を強制されたのは憲法違反だとして、被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)は3日、旧法を「違憲」とし、国に賠償を命じる判決を言い渡した。国会議員の立法行為自体を初めて違法とも認定した。
判決は15人の裁判官全員一致の意見で、最高裁が法律の規定を違憲としたのは戦後13例目となる。
大法廷は、不法行為から20年で賠償を求める権利が自動的に消滅する民法(当時)の「除斥期間」について「著しく正義・公平の理念に反する場合は適用されない」と初判断し、1989年の最高裁判例を変更。高裁段階で割れていた除斥期間の適否について、「重大な被害を受けた原告への適用は許されない」との統一判断を示した。
旧法は48年、戦後の食料不足への危機感を背景に、「不良な子孫の出生防止」を目的に議員立法で成立した。障害者らに強制的に不妊手術ができると規定され、96年に母体保護法に改正されるまで約2万5000人が手術を受けた。
2018年以降、被害者ら39人が全国12の地裁・支部に提訴し、この日の判決は、22〜23年に札幌、仙台、東京、大阪の各高裁で判決が言い渡された5件の訴訟が対象となった。
判決は旧法について、「障害者の出生を防止するという目的は、当時の社会状況を勘案しても正当とはいえない」と指摘。「障害者を差別的に扱い、不妊手術によって生殖能力の喪失という重大な犠牲を強いた」として、個人の尊厳や人格の尊重をうたう憲法13条と法の下の平等を定めた憲法14条1項に反すると判断した。
判決は、違憲性が明白な法律を成立させたことは国家賠償法上、違法とも判断した。国の政策として不妊手術を積極的に推進してきたことなども踏まえ、「国の責任は極めて重大だ」と述べた。
さらに、「国は、1996年に旧法が廃止された後も、不妊手術は適法だと主張し、補償もしなかった」と批判。「訴訟が除斥期間の経過後に起こされたということだけで、国が賠償責任を免れることは著しく正義・公平の理念に反する」とし、国が除斥期間の適用を主張することは権利の乱用にあたると結論付けた。
判決は、原告勝訴とした4件の高裁判決に対する国側の上告を棄却し、被害者1人あたり最大1650万円を支払うよう国に命じた司法判断が確定した。原告敗訴の仙台高裁判決は破棄し、損害額を算定させるため同高裁に審理を差し戻した。
◆除斥期間=改正前民法の「不法行為から20年を経過した時は損害賠償請求権が消滅する」との規定について、最高裁が1989年、「除斥期間」と判示し、判例として定着した。2020年施行の改正民法で、事情によっては請求権が残る「時効」に統一された。
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