年金の財政検証 支え手を増やし信頼高めたい
読売新聞 / 2024年7月4日 5時0分
少子化に歯止めがかからず、年金制度の支え手は減る一方だ。制度を安定的に運営していくためには何が必要か。
早い段階から対策を検討し、国民の信頼を高めていかなければならない。
厚生労働省が5年に1回行っている公的年金の財政検証を公表した。経済見通しなどを踏まえて将来の年金額を推計し、今後の課題を見定める狙いがある。
会社員の夫と専業主婦の妻が共に65歳に達した世帯をモデルケースとし、夫婦が受け取る年金額が、平均的な現役男性の手取り収入と比べて「50%超」を維持できるかどうかが検証のポイントだ。
それによると、経済成長率の平均がマイナス0・1%と仮定した場合、2060年度の年金支給額は50・4%(月21万4000円)となった。平均の成長率が1・1%の場合には、57・6%(月33万8000円)に増えるという。
現在は現役男性の平均手取り収入が月37万円で、年金支給額はその61・2%(月22万6000円)となっている。財政検証では、将来の支給水準は61・2%を下回ることになるが、法律で定める「50%超」は確保できる見通しだ。
5年前の検証では、最も成長率が高い想定でも年金支給額は51・9%にとどまっていた。
将来見通しが5年前より好転したのは、女性や高齢者の就労が進み、働く女性などが年金に加入して保険料を負担する人数が増え、年金財政が改善したことが影響したようだ。また、最近の株高で年金積立金の運用も好調だった。
ただ、財政検証はあくまでも試算にすぎない。
政府は、自営業者らが加入している国民年金について、保険料の納付期間を5年延長して64歳までとすることを検討していた。
だが、厚生年金に関する将来予測が想定以上に良好だったため、国民年金についての新たな負担増に反発が強まることを警戒し、見送る方針だという。
確かに、納付期間が5年延長されれば、計100万円の保険料負担が生じることになるが、一方で将来受け取る国民年金は年10万円程度増えるとされている。
年金制度は老後の生活を支える基盤だ。政府は制度の安定を図る意義を丁寧に説明し、負担についての理解を求めていくべきだ。
夫婦共働きの世帯が増える中、財政検証のモデルケースは実態に即していないという指摘がある。現役世代の関心を高めるため、世帯像を検討し直してはどうか。
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