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強制不妊判決 「時の壁」越え救済命じた司法

読売新聞 / 2024年7月4日 5時0分

 人の命に優劣をつけるような制度が許されるはずはない。国は、被害者を広く救済する制度を早急に講じるべきだ。

 旧優生保護法に基づき不妊手術を強制された被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審で、最高裁大法廷は旧法を違憲だと判断し、国の賠償責任を認める判決を言い渡した。

 国に最大1650万円の賠償を命じた高裁判決が、それぞれ確定した。旧法について、判決は「個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反する」と指摘した。

 1948年に施行された旧法は「不良な子孫の出生防止」を目的に障害者らの不妊手術を認めた。これに基づいて2万5000人が手術を受けた。本人の同意がないまま行われた手術もあった。

 これほど差別的な法律が戦後につくられ、96年まで存続していたとは、残念というほかない。最高裁の判断は当然である。

 訴訟の最大の争点は、不法行為から20年で賠償を求める権利が消滅する民法(当時)の「除斥期間」が適用されるかどうかだった。

 強制不妊手術を巡る訴訟は2018年以降、全国12の地裁・支部に起こされた。その時点で被害者はすでに、手術から数十年が経過していた。そのため、1、2審判決で除斥期間を理由に請求を棄却するケースもあった。

 だが、最高裁は「除斥期間の経過で国が賠償責任を免れることは著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できない」と述べた。

 被害者は、意に反した手術で心身が深く傷つけられ、子供を持てなくなった。回復できない人権侵害の深刻さを重視し、全員を救済すべきだと考えたのだろう。

 国会では19年、各被害者に320万円の一時金を支給する救済法が成立した。ただ、最高裁が認めた賠償額は1000万円を超えており、両者の隔たりは大きい。

 最高裁判決は、今回の5件以外の訴訟にも影響を与える。国は、現在も続く他の訴訟の結論を待たずに、新しい救済策をつくり、補償額を見直すことが急務だ。

 一時金の支給認定を受けた人はこれまで1000人余りにとどまる。自分が手術を受けたと知らないままの被害者も多いという。

 手術から長い歳月がたち、被害者は高齢化している。障害を抱える人々が、補償の手続きを自分で進めるのは容易ではなかろう。

 被害者は、国が責任を認め、謝罪することも望んでいる。国には、被害者の思いを酌み取り、手厚く支援する責務がある。

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