現在の29歳、受け取る年金は現役世代の50・4%…2060年度の65歳世帯で月21・4万円
読売新聞 / 2024年7月4日 5時0分
厚生労働省は3日、公的年金財政の長期見通し「財政検証」の結果を公表した。過去30年と同様の経済状況が続いた場合、2060年度に65歳世帯が受け取れる年金は月21・4万円で、現役世代の平均手取り収入と比べた水準「所得代替率」は50・4%となった。法定の「50%超」は維持され、前回検証と比べて就労が進んで年金財政の支え手が増えたことから全体的に改善傾向がみられた。
財政検証の結果は、厚労省が3日の社会保障審議会年金部会に示した。年金財政の健全性を5年に1度点検する取り組みで、制度的にはおおむね約100年先まで維持できることが確認された。
今回は労働参加の進み具合などを組みあわせて四つの経済シナリオを用いて、平均的な収入の会社員だった夫と専業主婦の65歳世帯の年金額がどう変化するかを試算した。2024年度現在では、所得代替率61・2%、月22・6万円となっている。
経済状況の順調さに応じて上から3番目のシナリオ「過去30年と同様の経済状況が続いた場合」は実質経済成長率をマイナス0・1%に設定している。これでみると、40年度には所得代替率が56・3%、額にして月21・6万円となる。額面で大きく減少していなくても、年金の水準を示す所得代替率が下がれば、年金受給世帯の暮らし向きは現役世代に比べて厳しくなる。
その後、57年度に、年金額の伸びを抑えるための「マクロ経済スライド」の調整が終わり、60年度は50・4%、月21・4万円となるが、その後も50・4%で推移する。
一方、これより良好なシナリオの「経済成長や労働参加が好調に続いた場合」(成長率1・1%)であれば、調整が20年前倒しの37年度に終わり、所得代替率は57・6%が続く。額面では、40年度は月25・1万円、60年度は月33・8万円となる。
このほか、厚労省は世帯試算とは別に、単身男女ごとに65歳時の平均受給額の見通しを今回初めて示した。共働き世帯の増加など、社会構造の変化に合わせて見通しを多様化させるためだ。政府は今回の結果を受け、2025年に予定している年金制度改革の議論を本格化させる予定だ。
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