親離れしたクマが歩き回る6〜7月、遭遇したら「ゆっくり後ずさり」…対策は「隠れ場所のヤブを刈る」
読売新聞 / 2024年7月4日 14時8分
福井県内で今春からツキノワグマの出没件数が急増し、4〜6月は3か月連続で過去最多となった。人里近くで冬眠した個体が多かったことなどが原因とみられ、6月には1頭が福井市の住宅街に侵入。民家に立てこもった。夏は親離れや繁殖によりクマの活動範囲が広がる時期で、人と遭遇する危険性も高まるため、県が警戒を呼びかけている。(佐藤祐介、清水翔)
街中に
「クマが出ています。家の中に入ってください」
6月18日の昼過ぎ、福井市花堂東の住宅街では、クマの立てこもりについてアナウンスするパトカーが巡回し、物々しい雰囲気に包まれた。福井南署や市などによると、クマは体長1・1メートルの雌の成獣。午後3時過ぎに猟友会員に射殺された。
現場はJR福井駅の南約2キロ、越前花堂駅の北東600メートルに位置する。ここまでの移動経路について、クマの生態に詳しい石川県立大の大井徹特任教授は「東側の足羽川沿いか、西側の足羽山などを足がかりに移動してきたのではないか」と推測。市の担当者は「住宅街にクマが出たことは大きな驚きだ。今後は街中をうろつく事態も想定し、どう対応すべきか検討しないと」と危機感を強める。
人里近くで冬眠か
県によると、県内で確認された目撃情報、フンや足跡などの痕跡、わなによる捕獲を合わせた出没件数は、4月が27件、5月は116件、6月は255件。いずれも2004年に統計を取り始めてから過去最多となり、3か月合計の398件は、それまで最多だった19年(214件)の1・8倍に達した。
なぜ今年は出没数が多いのか。県や大井特任教授は、餌となるドングリ類(ブナやミズナラの実)が少なかった昨秋、山を下りてきたクマの多くが人里近くで冬眠し、春先に目覚めた後も人里周辺で活動しているためと分析する。
県自然環境課の西垣正男参事は「出没の多さには、県民が目撃情報を積極的に報告してくれるようになった側面も関係しているだろうが、それを考慮しても数が多い。山間部に住む人の数が少なくなったことなどから、クマの生息域は年々拡大しているため、今後も出没数が増える恐れがある」とみている。
生息数を管理へ
繁殖期の6〜7月は一年で最もクマの活動が活発になり、親離れをした若いクマが広範囲に歩き回る時期でもある。夏の行楽シーズンと重なるため、県は市町との臨時の連絡会を6月11日に小浜市で、同18日に勝山市でそれぞれ開催。クマの生態について情報共有し、ドラム缶のおりを使った捕獲技術の研修を行った。
さらに、▽生ゴミを放置しない▽隠れ場所となるヤブを刈る▽遭遇したらゆっくり後ずさりする――といった対策の周知を強化するよう求めた。
県は24年度中にクマの駆除に関する管理計画を策定し、25年度から実施する方針で、西垣参事は「計画的に生息数を管理し、被害を防ぎたい」と話す。
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