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次世代原子炉「常陽」用の燃料国産化へ、政府が製造工場の新設を検討…ロシア依存からの脱却図る

読売新聞 / 2024年7月4日 15時0分

 政府は次世代原子炉「高速炉」の実用化に向け、燃料の国産化を推進する。日本原子力研究開発機構の高速実験炉「常陽」(停止中、茨城県大洗町)用の燃料製造工場の新設を検討し、2026年度の再稼働に備えて安定供給できる体制を目指す。エネルギー安全保障上の観点からも自前で製造する能力を確保する。

 脱炭素電源でもある高速炉などの次世代原子炉は、各国による開発が加速しており、将来的には燃料の供給が不足する恐れがある。

 ただ、十分な製造能力があるのは世界でもロシアに限られている。ウクライナ侵略でロシアの燃料を調達することが難しくなり、米国は国内メーカーを支援して国産化を進め、ロシア依存からの脱却を図っている。このため日本も高速炉向けの燃料の国産化を進める。

 国内唯一の高速炉である常陽は、装置トラブルの影響で07年から運転を停止していたが、23年に原子力規制委員会の審査に合格した。現在、26年度半ばの再稼働に向けて安全対策工事を実施している。

 常陽の燃料は、同機構の核燃料サイクル工学研究所(茨城県東海村)で1972年から計約680体製造された。だが、稼働停止が長期化し、製造もストップした。

 関係者によると、既存の製造設備は老朽化が進み、現状では規制委の安全審査に合格するのは難しい。常陽の燃料は、プルトニウムの濃度が高いことなどから、民間では製造できないという。

 現在、未使用の燃料約80体が貯蔵されているが、再稼働から10年以内に枯渇する恐れがある。そこで同機構を所管する文部科学省などは、常陽が燃料不足で停止しないよう、再稼働から10年以内に、同機構の関連施設内に新たな燃料工場を整備したい考えだ。

 建設費は数百億円規模になる見通しで、文科省は近く開く有識者会議で方針を報告し、燃料工場の新設に向けた検討を本格化させる。

 高速炉は、使用済み燃料に含まれるプルトニウムを取り出して再利用する「核燃料サイクル」の中核を担う施設だ。政府は常陽の運転経験を踏まえ、経済性を確認する実証炉や商用炉の建設を目指している。

 新たな燃料工場では、商用炉が実現した場合を想定し、高レベル放射性廃棄物が出にくい燃料の製造技術の研究も進める。文科省幹部は「他国に依存せず、自国で燃料を供給できる体制を整えたい」と話す。

◆高速炉=高速の中性子の性質を利用して、通常の原子力発電所よりもプルトニウムなどを効率的に燃やす原子炉。発電用の熱を取り出すための冷却材に水ではなく、液体ナトリウムを使う。

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