出産の保険適用 子育て世代を支える仕組みに
読売新聞 / 2024年7月5日 5時0分
若い世代が経済的な負担を懸念し、出産をためらうような事態は避けねばならない。出産を支える仕組みを整え、子を産み育てやすい社会をつくることが急務だ。
出産費用の保険適用に向け、政府の有識者検討会が議論を始めた。政府は来春にも意見を集約し、2026年度の導入を目指す。
帝王切開などを除く正常なお産は、病気ではないため公的医療保険が利かず、医療機関が独自に価格を設定している。
出産費用は年々上昇し、22年度の平均は約48万円で、10年前に比べると6万円以上も上がった。
政府は現在、保険を適用しない代わりに出産育児一時金を妊婦に支給している。出産費用の平均価格に合わせて段階的に引き上げられ、現在は50万円だ。
ただ、政府が一時金を増額する度に価格を上げる医療機関もあり、「便乗値上げではないか」といった指摘が出ている。
出産費用は医療機関によって差が大きく、価格設定の根拠も不透明だ。お祝いの食事や記念写真など、医療とは関係のない料金を含んでいる場合もある。
保険適用で一律の公定価格となれば、自由な値上げはなくなる。出産そのものにかかる費用が明確になり、妊婦も安心して出産に備えられるのではないか。
保険適用とした場合、通常は3割の自己負担が生じるが、政府は妊婦に負担を求めない方針だ。
ただ、公定価格をいくらに設定するかは難しい課題だ。
出産費用は地域差も大きく、最も高い東京は平均60万円、最低の熊本は36万円となっている。仮に公定価格を低く抑えた場合、経営難に陥って閉院する医療機関が出てくる可能性がある。
日本では、出産全体の半分近くを地域の開業医が担っている。小規模な施設でも医師や助産師らが常に待機している必要があり、コストがかさみがちだ。
保険適用によって、こうした施設が相次いで閉院するようなことになると、大学病院などに妊婦が集中し、医療スタッフや病床の不足を招くことになりかねない。
保険適用するとしても、地域での貢献度が高い医療機関には特別の加算を検討してはどうか。
少子化の影響もあって、お産を扱う医師は減っているという。出産年齢が上がり、リスクの高いお産も増えた。医療人材をどう確保し、安心してお産が出来るような環境を整備していくのか、真剣に考える時期だ。
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