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イギリス新首相のスターマー氏、実務家としての安定感に定評…労働党左派からは「暴君」とも

読売新聞 / 2024年7月5日 19時49分

5日、勝利が確実となり、ロンドンで演説する労働党のスターマー党首=ロイター

 【ロンドン=尾関航也】英国のキア・スターマー新首相(61)は、苦難の境遇から人権派弁護士を経て50代で政治家になった遅咲きの苦労人だ。政治指導者としては退屈でカリスマ性に欠けると評される一方、実務家としての安定感には定評がある。

 スターマー氏はロンドンの南約30キロのサリー州で、両親と姉、妹、弟の6人家族で少年時代を過ごした。

 父は独立した工具職人、母は看護師だったが、時には電話代が払えないほど生活は苦しかった。母が全身の痛みを伴う難病を患って入退院を繰り返し、それが一家の日常に重くのしかかっていた。

 スターマー氏にとって、経済格差や公的医療を巡る政策課題は自らの生い立ちにかかわる問題であり、本人もそれを公言している。

 学校の成績は優秀で、学費を工面して英リーズ大で法律を学び、オックスフォード大の法学修士課程を経て法廷弁護士になった。弁護士時代は法律事務所に所属して主に人権問題を担当し、人種差別の被害者や性的少数者、環境保護活動家らの弁護にあたりながら社会問題と向き合った。

 2008年、当時の労働党政権の任命で検察局長官に就任。今度は公権力の一翼として社会の暗部と向き合い政治の重要性を痛感した。英メディアのインタビューに「本当に意味のある変化をもたらすのは政治しかない」と語っている。

 下院初当選は15年。選挙に出たのも初めてだったが、当時のジェレミー・コービン党首に実力を買われ、政権交代に備えた「影の内閣」の要職を1年目から任される。党首に選出されたのは20年4月。労働党が惨敗した19年末の総選挙後、コービン氏の辞任に伴う党首選を制した。

 労働党は当時、左傾化が進み、中道層の支持を失っていた。それを取り戻すための方策として、スターマー氏は、基幹産業国有化など左派色の強い公約を取り下げ、党の穏健化を推し進めた。党内基盤を固めながら、4年間かけて進めた漸進的な政策修正だった。

 弁護士時代の同僚は、スターマー氏について「プロセスが重要と考えている」と証言する。「並外れて合理的」でもあるという。党内左派には「暴君」「日和見主義者」に映る。

 毎週水曜の下院の党首討論では、ジョンソン元首相やスナク前首相を相手に、論戦をこなし、安定感を印象付けた。

 首相就任を見越して外国首脳との人脈作りにも余念がなく、昨年2月にウクライナを訪問済みだ。

 妻のビクトリアさんはユダヤ系。10歳代の息子と娘がいる。どれほど多忙でも金曜午後6時以降は家族のために時間を割くと決めており、首相就任後もできる限りそうする意向だという。検察局長官としての功績で14年にナイトの爵位を授与され、「サー」の称号で呼ばれる。

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