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山積みのさびついた金型「20年間、使われずに置きっ放し」…下請けの経営圧迫する無償保管問題

読売新聞 / 2024年7月5日 22時16分

約20年間使われないまま、積み重ねられた金型。対応する車種の量産期間が終わっても発注者側は引き取らず、保管料も支払われてこなかった

 製造業の下請け業者を長年苦しめている「使わない金型」の無償保管問題。公正取引委員会は昨年以降、トヨタ系企業など大手を含む5社の下請法違反を認定し、行政指導である勧告を実施してきた。商慣習を名目にした不当な取引を一掃し、下請け業者の経営改善による従業員の賃上げなどにつなげていきたい考えだ。

 「もう20年間、使われずに置きっ放しです」。6月下旬、関東地方の自動車部品製造工場で、担当者がさびついた金型を指し示した。

 金型の重さは最大で1セット約5トン。対応する車種の量産期間が終わっても発注者側は引き取らず、保管料も支払われてこなかった。

 利用予定のない金型は全体の3割近い約400セットに達し、借地に自費で建てた倉庫や駐車場に山積みされている。年間数百万円の借地代も自腹だ。担当者は「資材や燃料の価格が高騰する中で保管の強要が続けば、経営が限界まで圧迫されてしまう」と訴える。

 こうした状況は全国的に常態化しており、公取委は40年以上保管させていた例も確認している。

 中小企業庁の昨年の調査では、金型や木型など「型」の保管費用の負担を全ての下請け業者に行った発注者は約2割にとどまり、約5割は全く費用を負担していなかった。中小企業の経営改善による賃上げなどを目指す国の方針もあり、公取委は現在、下請法の積極的な運用を通じた事態の是正に乗り出している。

 2023年3月、バルブ製造用の金型など計330セットを下請け業者9社に無償保管させていた「岡野バルブ製造」(北九州市)に勧告を実施。04年に金型などの保管の強制が規制対象に加わってから、初の勧告だった。

 その後も、わずか1年4か月の間に4社に勧告を行った。被害相当額の返金措置も進めており、今年2月に勧告を受けた自動車エアコン製造販売大手「サンデン」(群馬県伊勢崎市)は61社に計1億円超の返金を約束した。勧告に基づく返金総額は、算定中のものを含め、5社で計2億円を超える可能性があるという。

 公取委幹部は「保管の強要が続けば、物価高に応じた下請け業者の賃上げも難しくなり、経済の好循環に悪影響が出る。発注者が現状を放置するなら、厳正に違反を認定する」と話す。

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