1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

過疎化に直面する奥能登、適切な復興探る…「全て復旧するという考え方は良いことだろうか」

読売新聞 / 2024年7月6日 5時0分

市道に残る土砂の前で地区の現状を語る谷内均さん(6月27日、石川県輪島市で)=片岡航希撮影

[能登地震6か月]<5>最終回

 幹線道路につながる地区唯一の市道は、今も土砂に覆われている。「復旧は5、6年先だろう」。山あいにある石川県輪島市打越町の区長、 谷内 やち均さん(66)はそう言ってため息をついた。

 地区は倒木や土砂崩れで約5日間孤立した。停電の解消は4月19日。水道は6月23日にようやく復旧した。地盤が緩く、最近も土砂が崩れた。「地震前から『10年後どうするか』という話をしていた」と谷内さん。地区の11世帯22人のうち、75歳以上は10人。集落全体での安全な場所への移転に向け、住民と検討する考えだ。

 過疎化が進む奥能登の復興をどう描くか。東日本大震災が先例になる。

 東北の被災地では、都市機能を集約して行政機能を効率化する「コンパクトシティー化」による復興が進められた。宮城県山元町や女川町が代表例とされる。

 山元町は三つの新たな街を整備し、住宅や商業施設を集めた。行政コストを抑え、生活の利便性が向上した一方、3か所以外への集団移転を認めない手法に批判もあった。当時の町長、斎藤俊夫氏(75)は「数世代先を見据え、スピード感を重視した」と振り返る。

 輪島市は地震前の2017年、コンパクトシティー化に向けた「立地適正化計画」を策定している。一極集中型ではなく、郊外にも拠点を設ける「多極ネットワーク型」のまちづくりを目指すとする内容で、検討中の市の復興計画にもこの考え方を反映する方針だ。

 市内では、道路や上下水道などに壊滅的な被害が出た。上畠茂雄・市まちづくり推進課長は「人口が減少する中、全て復旧するという考え方は市民にとって良いことだろうか」と話す。

 東日本大震災では、10年間で38兆円もの国費が投じられ、華美な施設、巨大防潮堤、広い道路が次々と造られた。その間に人口流出が進行。人けのない街の公共施設の維持管理が、被災地の重い負担となりつつある。復興庁は昨年8月公表の総括で、「将来推計人口に基づく精査」が復興事業に必要だと指摘した。

 奥能登の復興に、その教訓は生かされるだろうか。

 石川県が6月に策定した「創造的復興プラン」。人口減と高齢化という課題を踏まえ、「単に被災前の姿に復元するのではなく、未来志向に立って以前よりも良い状態へと持っていく」ことを目的とする。

 そのプランには、地震前から計画があった金沢と奥能登を結ぶ自動車道「のと里山海道」の4車線化と、能越自動車道の整備促進に加え、主要道路「珠洲道路」「門前道路」の高規格化が盛り込まれた。「 強靱 きょうじん化」が理由だ。

 例年6000億円ほどの県の一般会計予算は今年度、特別交付税などで過去最大の約1兆2400億円。例年の2倍を超す予算規模に、プラン検討会で委員の一人がこうくぎを刺した。「道は猛烈に高い。予算の使い方を間違えると、あっという間になくなる」

 委員を務めた東北大の小野田泰明教授(建築学)は「復興に関する予算の使い方を相当丁寧に見ていく必要がある。復興の 進捗 しんちょく状況を行政が外部に公開する仕組みも重要だ」と指摘する。

 馳浩知事は6月7日、報道陣に「通信環境、上下水道、道路は基本的に原状復帰が原則だ」と強調した。過疎地域は全国にある。奥能登の復興は、そうした地域で大規模災害があった場合のロールモデルになる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください