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英国の政権交代 労働党大勝が示す期待と困難

読売新聞 / 2024年7月6日 5時0分

 欧州連合(EU)からの離脱や新型コロナウイルス禍の悪影響で傷ついた英国民が、保守党政権の継続を拒み、変化を選択したと言えよう。

 英下院選で最大野党・労働党が大勝した。650の小選挙区のうち400以上の議席を獲得し、14年ぶりに政権が交代した。新首相にはキア・スターマー党首が就任した。

 一方、スナク前首相が率いる与党・保守党は多くの議席を失い、解散前の半数以下にとどまった。歴史的な惨敗である。

 英国は、保守党政権が主導した国民投票でEUを離脱した。しかし、この選択を巡って社会の分断と混乱は深まり、離脱後も国民の多くは成果を実感できずにいる。こうした失望が、選挙結果に表れたのだろう。

 保守党は、EU離脱によって財政や政策の自由度が高まると主張していた。だが、景気低迷や物価高に歯止めがかからず、英国独自の移民受け入れ規制も、かえって深刻な人手不足を招いている。

 歴代首相の稚拙な統治が、保守党離れを加速した面も否めない。ジョンソン元首相は、コロナ禍に首相官邸でパーティーを催し、批判された。トラス元首相は唐突に大型減税を発表して市場の信頼を失い、退陣に追い込まれた。

 労働党は2019年の前回総選挙で大敗し、スターマー氏が党首に就いた。前党首が掲げていた、水道の国有化をはじめ急進左派色の強い公約を取り下げ、中道的な政策を進める姿勢を示した。

 現実路線への転換が、幅広い層に受け入れられたのではないか。今後は、保守党時代の「負の遺産」を清算し、成果を示すという難題に取り組まねばならない。

 評価できるのは、労働党が、外交・安全保障分野では、保守党が進めてきた政策を継承する方針を示していることだ。

 ロシアの侵略にあえぐウクライナを支援し、対露制裁を続ける。EUとの関係修復も進める。新政権の英国は、国際社会の安定に向けて、引き続き欧州の主要国としての指導力を発揮してほしい。

 英国は近年、インド太平洋地域への関与を強めている。強引な海洋進出を進める中国を念頭に、日本をパートナーとして重視している。日英はイタリアとともに、次期戦闘機を共同開発している。

 日本と英国は、民主主義や法の支配といった普遍的な価値を共有する。新政権と、幅広い分野で協力関係を発展させることは、日英や世界の利益となるだろう。

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