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娘殺した男に初めて思い伝えた男性、「過去忘れたい」返事に憤り…伝達制度利用は「やってよかった」

読売新聞 / 2024年7月6日 6時55分

受刑者の発言などが記された書面を一読後、思いを語る渡辺さん(5日、神奈川県内で)=園田寛志郎撮影

 横浜市で2000年、当時22歳の長女を殺害された渡辺保さん(75)が5日、殺人罪などで無期懲役が確定した受刑者の男(46)の心境などを記した書面を受け取った。被害者や遺族の思いを刑務所職員を通じて加害者に伝える「心情等伝達制度」を利用し、男に初めて気持ちをぶつけた渡辺さんは「思いを言えたのはよかった」とする一方、「過去のことは忘れたい」という男の言葉に憤った。

 渡辺さんの長女・美保さんは00年10月、同市内の路上で、勤め先から帰宅途中に車にはねられた上、包丁で首を刺されて殺害された。3年後、美保さんの中学時代の同級生だった男が自首し、逮捕された。

 渡辺さんは横浜地裁の公判に毎回足を運んだが、当時は遺族が被告人質問などを行える「被害者参加制度」がなく、男に直接思いをぶつける機会はなかった。

 05年3月、地裁で無期懲役の判決が言い渡されると、男は傍聴席の渡辺さんに向かって、「お前が迎えに行かなかったから娘は死んだんだよ」と暴言を吐いた。翌年8月、精神的に不安定になっていた妻・啓子さんは、電車にはねられて53歳で亡くなった。

 犯罪被害者らでつくる「にじの会」代表を務める渡辺さん。昨年12月に始まった心情等伝達制度により、07年に最高裁で無期懲役が確定していた男に初めて思いを伝える機会を得た。先月18日、刑務所職員に心情を伝えた。

 「家族の未来を壊された」「刑が確定して17年たつが、今どんな気持ちで生活しているのか」

 5日に届いた書面には、2日に渡辺さんの思いを男に伝えたと記載されていた。男が「過去のことは忘れて、今できることをやりたい。人生をやり直すことを考えている」と述べたと記されていた。暴言については「少し悪かった」とし、事件のことは「美保さん、その家族に申し訳ない」「ご 冥福 めいふくをお祈りします」と述べていた。

 渡辺さんは書面を読み終えると、「自分がやったことを全て帳消しにして、新しい自分の人生だけやり直す……。何人の人が苦しんでいるのか、考えたことがあるのか」と顔をこわばらせた。男の発言について「全然心がこもっていない」と受け止めた。

 法務省によると、同制度では、開始から今年5月末までに心情の聞き取りが50件あり、すでに42件が加害者に伝達された。

 渡辺さんは他の被害者や遺族に向け、「いい結果がくる可能性もあれば、嫌な気分になることもある。本当に考えて(制度を利用するか)結論を出した方がいいと言いたい」としつつ、「制度ができて思いを言えるようになった。やってよかったと思う」と話した。

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