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地熱発電調査現場でヒ素など含む大量の蒸気、事業者社長「判断ミスだった」…開発継続は未定

読売新聞 / 2024年7月6日 7時13分

 北海道蘭越町の地熱発電調査現場で昨年6月にヒ素などの有害物質を含む大量の蒸気が噴出した問題で、事業者の三井石油開発(東京)の原田英典社長が5日、ニセコ町内で記者会見し、原因に現場の判断ミスがあったことを認めた。周辺の環境回復に取り組む方針を明らかにしたが、地熱開発の継続については未定とした。被害補償については説明を避けた。(片岡正人)

 蒸気は昨年6月29日に噴出し、2か月後の8月28日に鎮圧された。原因について同社は、掘削作業中に地層の亀裂に遭遇した際、状況を確認しようと、冷却用の注水を中止したためと推定。「注水は継続すべきだった。判断が間違っていた」と説明した。

 事故を受けて、地熱開発を所管する独立行政法人「エネルギー・金属鉱物資源機構」は今年2月、地熱井を掘削する際の自主保安指針を改定。噴出兆候が認められた場合は、保安注水の実施や噴出防止装置の早期設置などを新たに明記した。

 同社は「予兆時の注水の徹底」など再発防止策を明らかにした。しかし、ニセコエリアでの事業再開については、「有効性の高い地域だが、復旧作業に重点を置いており、先のことは何も決まっていない」とした。

 周辺の森林や土壌、生態系などへの影響については、中立的な機関である「環境影響評価委員会」の専門家による調査が続いている。

 森林関係では、ダケカンバが自発的に葉を落として、その年のうちに新しい葉を付ける「二次開葉」の現象がみられた。一方、下草が少なくなっている状況も確認され、今後も経過観察が必要という。

 その他の分野も含め、この夏には中間報告が示される見通しだ。来年中に環境回復の方法を決定し、実施に移す予定で、3年後に成果を評価する方針という。

 補償について、同社は「個人のプライバシーを守るため」と繰り返し、全体像も完了したかどうかも明らかにしていない。

 この点に関し、蘭越町の米農家の男性(51)は「1反当たり数百円という提示を受けたが、風評被害があったわけではないので断った」と明かした。

 噴出した当初は、全く関係のない前年のらんこし米が買い控えられるなどの風評被害が相次いだ。しかし、昨年産の米については、「むしろ応援してくれるケースの方が多かった」と男性は話し、風評被害はすでに 払拭 ふっしょくされたとの認識を示した。

町長「安全対策に万全期して」

 金秀行・蘭越町長にこの1年を振り返ってもらった。

 ――対応にあたって心がけたことは。

 「地震や津波などと違い、(訓練もしていない)初めての災害だったので、とにかく事業者との連絡を密にして、国や道との連携も強化した」

 ――事業者の対応はどう感じたか。

 「汚染水を(現場域外に)流した際には抗議文も出し、誠心誠意対応するよう繰り返し伝えた。その後は体制も整い、できる限りのことはしてくれたと思う」

 ――ブランド米「らんこし米」への風評被害など町に対するイメージダウンが大きかった。

 「生産者が頑張ってくれた。昨年は猛暑の影響もあったが、町内産の米は全量1等米として出荷できた。ブランド米を何としても守るんだという強い思いを感じた」

 ――今後の地熱開発は。

 「再生可能エネルギーとしての地熱は国も推進している。今後、事業を進める場合は、これまで以上に住民への説明に努めるとともに、安全対策に万全を期して取り組んでもらいたい」

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