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AIの軍事利用 国際ルール作りを先導せよ

読売新聞 / 2024年7月7日 5時0分

 人工知能(AI)を搭載した兵器に人の命を奪うかどうかの判断を委ねるなど、誰が望むだろうか。AIによる 殺戮 さつりくを防ぐ手立てを早急に講じなければならない。

 AIを駆使した兵器は、すでに戦場に投入されている。

 ロシアによるウクライナ侵略では、双方の軍が、標的を選別するAIを使って無人機による攻撃を行っている。イスラエル軍もパレスチナ自治区ガザで、同様のAI兵器でイスラム主義組織ハマスの戦闘員を識別しているという。

 AIを搭載した無人機は、遠隔操作が不要で、省人化を図れるといった利点がある。戦場の膨大な情報を短時間で収集・分析し、作戦に役立てることも可能だ。

 こうした兵器は現在、標的の選別まではAIが行うが、攻撃するかどうかは人間が決めているという。だが、近い将来、人間の関与なしにAIの判断で攻撃まで行う自律型致死兵器システム(LAWS)が登場する可能性が高い。

 LAWSは、いったん起動させると、人間の管理を完全に離れる。仮にAIが判断を誤れば、誤爆や無差別攻撃など想定外の甚大な被害が生じる恐れがある。

 LAWSの実用化は、人道上も倫理上も到底容認できない。

 国連は昨年12月、加盟国にLAWSに関する見解をまとめることを求めた総会決議を採択した。

 これを受け、日本はLAWSを「開発する意図はない」としたうえで、国際的にも開発や使用は認められるべきではない、と記した文書を国連に提出した。

 日本を含む加盟国の見解を集約して、国連は今夏にも報告書をまとめる予定だ。

 国際社会では、10年前からLAWSの規制に関する議論が行われているが、各国の主張の隔たりは大きく、合意にはほど遠い。

 途上国などは一切の開発の禁止を求めているが、ロシアやイスラエルなどAI兵器の開発国は、条約で開発を禁じることに後ろ向きだ。米国は、まず緩やかな行動規範を作り、将来は条約で開発を制限すべきだと主張している。

 戦闘の様相を一変させることになるLAWSは、歴史的に、核兵器に匹敵する軍事革命になるとも言われている。

 唯一の被爆国である日本は、非人道的な兵器を規制することの重要性を訴え、国際的なルール作りを先導していくべきだ。行動規範にしても条約にしても、実効性を確保するために、多くの軍事大国が加わる仕組みとしたい。

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