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開始半世紀の山陰自動車道、ついに開通率6割へ…いずれ萩・津和野と出雲大社を巡るツアーも

読売新聞 / 2024年7月7日 10時0分

 鳥取、島根、山口各県を結ぶ山陰自動車道の整備が着々と進み、開始から半世紀以上を経て、今年度中には開通率が6割を超える見通しとなった。2018年の西日本豪雨では通行止めとなった高速道路の代替路として機能し、物流の効率化などへの効果も期待されている。一方、山口県内では整備が遅れており、早期完成を求める声が上がっている。(中尾健、木崎俊勝、小野悠紀)

◆工事急ぐ

 6月下旬、山陰道の一部で、山口県長門、下関両市を結ぶ俵山・豊田道路の第1トンネル(278メートル)では、壁面に防水シートを張る作業が行われていた。同道路は延長13・9キロの自動車専用道路。同トンネルは3月に貫通し、年内にも完成する予定だが、用地交渉が難航し、開通時期は未定という。国土交通省山陰西部国道事務所工務課の河上伸一課長は「早期開通に向けて安全第一で作業を進める」と表情を引き締めた。

◆西日本豪雨

 山陰道に期待される役割の一つが災害時の移動ルートだ。中国地方では山陽自動車道と中国自動車道が九州と関西・関東をつなぐ大動脈の役目を果たしているが、18年7月の西日本豪雨では、山陽道・広島―河内両インターチェンジ(IC)間で9日間、中国道・新見―北房両IC間で3日間、通行止めになるなどの被害を受けた。その際、代替路となったのが山陰道だった。

 西日本高速道路が豪雨発生前後の交通量を比較したところ、松江玉造―宍道両IC間では約9倍、江津―江津西両IC間では約38倍に増えていたという。

◆物流・観光も期待

 今年4月からトラック運転手の時間外労働の規制が強化され、輸送力の低下が懸念される中、物流の効率化も見込まれる。佐賀県の運送会社に勤める運転手の男性(60歳代)は山陰側を通って京都方面へ向かうことがあり、「全線開通すれば輸送時間がかなり短縮される」と予想する。

 観光業界も早期整備を待ち望む。阪急交通社(大阪市)によると、萩・津和野(山口県萩市など)がある山陰地方西側と、出雲大社(島根県出雲市)や鳥取砂丘(鳥取市)がある東側を一つのツアーで回るのは時間的に厳しいという。同社の担当者は「山陰道の開通が進めば、新たな周遊ルートの開発につながる可能性がある」と話す。

◆鳥取・島根「優先」

 ただ、山口県内では整備の遅れが目立つ。鳥取県で全線、島根県で9割が事業化しているのに対し、山口県は6割弱。国交省関係者は「限られた予算の中で、鳥取、島根両県の主要都市をつなぎ、利用者が多い道路が優先された側面はあると思う」と打ち明ける。

 山口県は国に山陰道の早期整備を求めており、今月2日には、下関、長門両市の関係者らが村岡嗣政知事に対し、両市間の早期完成を国に働きかけるよう求める要望書を提出した。

 一般財団法人・山口経済研究所の能野昌剛・調査研究部長は「地域間のアクセスが強化されれば、企業進出による雇用創出や地元企業の事業拡大につながる。人口減少が進む地域の活性化のためにも山陰道の早期整備が必要」としている。

 ◆山陰自動車道=鳥取市を起点に松江市を経て終点の山口県下関市までを結ぶ延長約380キロの自動車専用道路。1972年に淀江IC―米子西IC間、東出雲IC―松江玉造IC間で整備が始まった。今年4月1日時点で221キロが開通し、104キロで整備が進んでいる。

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