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水害時「アンダーパス」は避難の盲点、迂回で移動距離8倍の例も…「別ルートを日頃から考えて」

読売新聞 / 2024年7月7日 11時0分

 水害時に道路や線路の下を通る「アンダーパス」が冠水し、避難などの際に誤って進入した車が立ち往生するケースが相次ぎ、死亡する事案も起きている。大阪公立大などのチームが 迂回 うかいによる避難への影響を推計したところ、移動距離が8倍以上になる場合もあると判明。最短距離で避難したいとの思いが〈盲点〉になるとみられ、チームは「避難経路の見直しに生かしてほしい」としている。(村上和史)

◆車水没で死亡も

 国土交通省によると、アンダーパスは2022年時点で全国に約3700か所ある。近年はポンプの排水能力が追いつかないほどの雨が降ることもあり、冠水を防ぐことは難しい。気づかずに進入すると水深50センチでも水圧で車のドアは開かなくなる。

 08年に広島市などでの集中豪雨で水没事故が相次ぎ、冠水を知らせる警報システムなどの整備が進んだが、その後も各地で豪雨災害が頻発。同年以降、福岡県太宰府市や愛知県清須市などで少なくとも6人がトラック・車の運転中や歩行中にアンダーパスで水没するなどして死亡している。

 18年の西日本豪雨でも広島、岡山両県の県道などが最も多い時で約30区間、冠水で通行止めとなり、住民避難や救助活動に影響した。21年7月には広島県海田町の国道2号が大雨で冠水し、通行止めとなった。

◆「途中で乗り捨ては難しい」

 大阪公立大の杉本賢二・准教授(空間情報学)らは地図上に複数のデータを表示する「地理情報システム(GIS)」を活用。アンダーパスを通って最寄りの避難場所に最短ルートで向かうケースと、アンダーパスが使えずに迂回したケースをそれぞれ算出・比較する手法を開発した。

 大阪府内で試算したところ、移動距離が長くなる地域は98か所に上り、5万人近くの住民に影響することがわかった。複数の主要鉄道が走る府北部に多く、冠水がなければ344メートルで避難できる地域では8倍以上の2・9キロまで延びた。徒歩で避難したり、別の避難場所に移動したりした方が早い地域もあった。

 車を使った避難は、地震や津波では例外的に認められているが、豪雨などの水害は冠水の範囲が予測できないため、国は状況に応じて車や徒歩で移動するよう求めている。杉本准教授は「車を途中で乗り捨てるのは心理的に難しい。徒歩も含めた『二つ目の避難路』を日頃から考えておくべきだ」と話した。

中部大の武田誠教授(都市浸水)の話「住民側がアンダーパスのリスクを適切に理解し、早めに避難しておくことも重要だ」

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