1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

草木に囲まれた崩れた家屋…北海道の高齢化集落10年で倍増、商店やGSは撤退し消滅の危機

読売新聞 / 2024年7月7日 13時30分

 北海道内の集落で、高齢化と小規模化が加速している。高齢化率が75%以上の集落数は129で、10年前から倍増した。100人未満の集落の割合も増加傾向で、商店やガソリンスタンドなど民間サービスの撤退にも歯止めがかからない。なんとか暮らしを維持しようと、住民たちが草刈りや除雪を担うNPO法人を設立する動きも出てきている。(宮下悠樹)

自然に返る集落

 石狩市中心部から北に約70キロ。日本海沿いに延びる国道231号から東に入ると、朽ちた空き家が立ち並ぶ集落が見えてくる。浜益区(旧浜益村)の 床丹 とこたん集落だ。崩れた家屋が草木や野花に包まれ、人の暮らしが自然に返りつつある。

 同市浜益支所によると、浜益区床丹集落はかつてニシン漁で栄え、1948年には348人が住んでいたという。しかし、66年に小学校が閉校し、現在定住しているのは高齢男性1人。自治会も活動がなくなり、市からの連絡は支所が直接行う。

 浜益区では床丹のほか2地区が3世帯以下で、このほか3地区も6世帯以下。全13地区のうち半分近くに「消滅」の気配が忍び寄る。市の担当者は「若者が出て行き、高齢化も進んでしまったが、住むところは自分で選ぶ権利がある。誰かが住んでいる限り、寄り添っていきたい」と話す。

 道が隔年で行っている「集落実態調査」によると、2023年度時点の集落数は176市町村で3635。前回と比べ、集落の統合で11減り、新たに8増え、合計で3減となった。深刻なのは高齢化と小規模化だ。高齢化率が75%以上の集落の数は13年度の58から129となり、人口100人未満の集落は2066(55・1%)から2202(60・5%)と、数も比率も増加。8〜9割の集落で、郵便局などの金融機関やガソリンスタンド、食料品や日用品の店がなく、年々撤退が進む。

担い手も高齢

 集落を維持するため、住民がまとまって動き出した地域もある。幌延町 問寒別 といかんべつ地区だ。かつて炭鉱があり、ピークの1955年には町の4割に当たる2856人が住んだが、現在は町の1割強の約300人にとどまる。

 町職員が危機感を持ったのは、2014年に増田寛也・元総務相らがまとめた「増田リポート」だ。町は「消滅可能性都市」に挙げられ、町住民生活課の山下智昭課長補佐は「このままでは町がなくなってしまうと感じた」と振り返る。

 町では住民間の話し合いや有識者による講演などを重ね、草刈りや除雪、予約制の「デマンド交通」などを行う組織の必要性を確認。今年4月、地域運営組織「ミナといかん」を設立した。地域おこし協力隊を中心に住民20人で活動し、補助金や利用料での事業化を目指す。6月にはNPO法人として認証を受けた。中心となる芳野福一さん(69)は「担い手も高齢だから大がかりなことはできない。小さな悪あがきかもしれないが、誰かがやらないと問寒別は守れない。皆で精いっぱいやってみたい」と語る。

 旭川市立大の大野剛志教授(地域社会学)は「集落の維持には、高齢者でも安心して住み続けられる仕組みが必要だ。大学などと連携して定期的に訪れる人の動きを作ったり、SNSなどで地元の魅力を発信し、注目してもらう機会を増やしたりと、外部の力を引き込む工夫も求められる」と指摘している。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください