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ベトナム・ハノイの麺料理「ブン・タン」を知っていますか…味わい深さは特筆モノです

読売新聞 / 2024年7月12日 10時16分

 ベトナムの麺料理は、フォーだけではない。ハノイの麺料理「ブン・タン」の味わい深さは特筆モノだ。フォーが鶏肉や牛肉をメインにした比較的シンプルな料理だとすれば、ブン・タンは多くの材料が醸し出すハーモニーが魅力と言えるだろうか。

メインの具は鶏肉

 ハノイの食堂「ブン・タン・トゥアン・ミン」のブン・タンは、メインの具は鶏肉で、もも(5万ドン=約310円)や尾(4万5000ドン=約280円)、背(同)など部位を選べる。他の具材は錦糸卵、ベトナム風ハム、シイタケ、タマネギ、香りの強いベトナムコリアンダー、干したダイコンなど多様だ。

 ゆでた鶏や豚の骨などがベースの白濁したスープをすすると、じんわりと体中に染み渡る。エビの味わいが舌に残る。鶏肉や卵、ハムのうまみ、コリアンダーやネギのさっぱり感が混ざり、細いしらたきのような麺のブンがつるつると喉を滑り降りる。エビのペーストを加えると風味が増す。

具材が多く複雑な調理法

 スープは鶏や豚の骨、焼いたショウガ、干しエビなどに塩や砂糖を加えて弱火で長時間煮込む。これと別にシイタケと干しエビを煮込み、スープと合わせる。熱湯にくぐらせた麺を具材を入れたおわんに入れ、スープを注げば出来上がりだ。

 店主のグエン・ティ・ガイさん(37)は、隣人から習ったやり方をもとに10年前に店を開いた。夫らと切り盛りするが、具材が多く調理法が複雑なため、細部まで気が抜けない。丁寧な仕事が、1日300杯以上売れる人気メニューを支えている。

 店を拡大したいなどの欲はなく、「完食してもらうことが喜び」と謙虚だ。そんなガイさんの店は、評判を聞きつけた市内外の客で今日もにぎわっている。

断面が丸い「ブン」

 ベトナムには米粉を材料とする麺が多い。「フォー」は平たく、「ブン」は断面が丸い。「ブン」を使った麺料理には、焼いた豚肉や野菜を使った甘酸っぱい「ブン・チャー」などがある。

裕福な家庭の料理が発祥

 ハノイの食文化に詳しい作家グエン・ゴック・ティエンさんによると、ブン・タンは、ハノイにある旧市街の裕福な家庭で作られていた料理が発祥で、19世紀の文献に初めて名前が登場する。一般には、ベトナムの旧正月「テト」での残り物を処理するため、主婦が工夫した料理という説が広まっている。

 かつては家族や友人のために時間をかけて作った料理だったが、やがて都市部の中産階級が好む料理となった。肉や野菜、卵やキノコなどがバランスよく使われ、栄養も満点だ。20世紀初頭から市場で売られるようになったが、手間暇がかかるため、あまり商売向きではないという。確かにフォーなどに比べ、店の数は格段に少ないと言える。

 熱々のブン・タンはかつて、ベトナム北部のハノイが涼しい時期の秋口から初夏にかけ、軽食として午後に食べるものだった。今は一年中、気軽に食べるようになった。ハノイっ子は出勤前の朝食や昼食のほか、夕食にすることもある。特に寒い冬に、出来たてを味わうのが最高だ。

 国内外の総支局長が、地域の自慢の味を紹介します。

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