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何度も「心が折れた」3年間、それでも立ち続けてきたアイドルがスケボー五輪代表に重ねるものは…清司麗菜の#skatelife

読売新聞 / 2024年7月12日 12時0分

 NGT48の清司麗菜さんは、東京オリンピックの後からスケートボードを始めました。競技歴はもうすぐ3年になります。間もなく開幕するパリオリンピックのスケートボードには友だちも出場することもあり、胸が躍っている様子。彼女が見つめてきたこの3年間のスケートボードシーンの姿は――。「清司麗菜の#SkateLife〜continuity180〜」の第17回です。

 いよいよ、パリオリンピックが始まる。長く、激しい代表争いを経て7月27日には男子ストリート、翌28日には女子ストリートが行われる。私がスケートボードを始めたのも、前回の東京オリンピックの時から。前回は1年延期されたから、3年になったとはいえ、2度のオリンピックの間、我ながらよくここまで続けてきたと思う。

アンバサダーになった

 先日、全国スケートボード施設連絡協議会という、スケートボードの練習施設を持っている自治体が集まる組織のアンバサダーに任命していただいた。会長さんから「初めて会ったときにパリオリンピックを目指しますと言っていました!」なんて紹介されて、恥ずかしかったなぁ。

 もちろん、私がパリオリンピックに選手として行けるわけがない。だけど、この3年間続けてきたこともあって、ずいぶん仲間も増え、日本代表選手に友だちがいるなんて、(スケボーを始めた)あの時は想像もつかなかった。

 オリンピックが始まれば、みんなそこしか見ないのは当然だ。アイドルだってわざわざ練習風景まで見せない。でも、そこにたどり着くまでにはいろいろなドラマがあるってことは伝えたい。

 東京オリンピックの時に、日本はスケートボード・ストリートで三つのメダルを取った。男子ストリートでは堀米雄斗選手が金、女子ストリートでは西矢 (もみじ)選手が金、中山楓奈選手が銅だ。あの時を最後にスケートボードは見ていない――という人も多いかもしれない。でも実は、この3年間、日本のスケートボードは世界を圧倒し続けてきた。

苦しかった堀米選手

 ストリート男子。代表は堀米雄斗選手と、2023年の世界選手権で優勝した白井空良選手、世界ランキング1位で14歳の小野寺 吟雲 (ぎんう)選手に決まった。

 この3年間、堀米選手がトップを走り続けてきたかというと、実はそうじゃない。ルールの変更があったりして、堀米選手は不調の時期が長く続いた。最後のオリンピック予選で出場を決めるまでは、日本人でも5番手。優勝を決めた「ノーリー270ノーズブラントスライド」で、オリンピックに出られる日本勢3番手に滑り込んだ。

 そんな時期に台頭してきたのが小野寺選手。14歳と若いけれど、世界最高峰の賞金大会「XGames」で最年少優勝するなど活躍してきた。実は、一番危なげなくオリンピック出場を決めたのも彼だ。

 白井空良選手は、堀米選手の陰に隠れながらも日本のスケボーシーンを支えてきた。気さくな方で、試合中は驚くほどエモーショナル。観客をあおったりして、場の空気を味方にしてしまう魅力がある。私が2023年の世界選手権で取材させてもらった時も何度かお会いしていると「朝のお姉さんじゃないですか!」と声をかけてくれる“陽キャラお兄ちゃん”だ。だけど、インタビューでは「ほかの選手の成功も見ない。自分のことだけを必死に考えている」と言っていて、そのコントラストはハンパじゃない。東京オリンピックで9位に終わった悔しさをバネにパリでは飛躍してほしい。

サプライズ尽くしの女子

 ストリート女子の顔ぶれには驚いた。東京オリンピックで金メダルを取った西矢選手がまさかの代表選考で落選。衝撃的なニュースだった。

そして、もう一人。強気のランと力強いトリックが特徴の織田 夢海 (ゆめか)選手も代表の座を逃した。

 彼女は選考レースで常にトップを走り続けていた。ストリートの世界最高峰リーグ「SLS」で、「キックフリップ・フロントフィーブル」を決めて女子史上最高得点の9・4点をマークしたのは語り草。世界選手権でも優勝して、「金メダル候補」と言われつづけていた。

 でも、五輪予選シリーズの第1戦で、まさかの予選落ち。第2戦で2位に入っても「日本勢3番手」に届かなかった。彼女が戦ってきた道のりを見てきただけに、本当に驚いたし、つらかった。

 同じガールズスケーターとして、パリ五輪の女子ストリートに出場するのは、西矢選手と織田選手、そして赤間 凛音 (りず)選手だと予想していた。その赤間選手は見事、代表入りを果たした。12歳で日本選手権を優勝した赤間選手は安定感ある滑りで世界ランクの上位に居続けたし、五輪予選シリーズでも上位に名前を連ねていた。唯一、順当に通過したような印象も受けた。

 東京五輪で銅メダルを獲得した中山楓奈選手は、土壇場からの逆転。最後の五輪予選シリーズに出場するまでは不調を引きずっていたようで、日本人でも4番手だったけれど、とにかく「負けない滑り」で粘り強く、代表の座をものにした。

 最大のサプライズは吉沢 (ここ)選手だ。14歳で、今回のオリンピックに出場する女子ストリートでは最年少。五輪予選シリーズ前までは日本人5番手だったのだけれど、第1戦で3位、第2戦で優勝して、一気に世界ランク1位まで駆け上がった。

 実は、彼女と話をしたこともある。世界選手権で「フリップってどうやったらできるんですか?」と聞いたら、「ココも最近できるようになったから、練習すればできますよ!」なんてね(めちゃくちゃかわいかった)。

 この時は世界ランクもほかの選手と比べると低くて、取材したとき、彼女の周りにいたのは私一人の時間もあったくらい。それなのにわずか半年で世界トップに駆け上がってしまうなんて……。

全てのスケーターが懸命に生きた3年間

 本当は他にも語りたい選手はたくさんいる。世界ランク5位の 愛嬌 (あいきょう)たっぷりな笑顔をみせる金髪スケーター・根附 海龍 (かいり)選手、「世界最高のスケーター」ナイジャ・ヒューストンと同じチームの佐々木 音憧 (とあ)選手。SLS APEXの初代女王でメガネがチャーミングな藤沢 虹々可 (ななか)選手――。

 この3年間、私はスケートボードに乗り続けた。アイドル活動ではよい時も悪い時もあった。NGT48も卒業が相次ぎ、中井りか、本間日陽というエースが2人も去った。何度も心が折れそうになった(実際には折れた!)。卒業しようかと悩んだことも一度や二度じゃない。イベントに出演できなかったことも、シングル曲の選抜入りができなかったこともたくさんあった。

 でも、NGT48に4期生が加わって、昨年のAKB48グループ歌唱力No.1決定戦ユニット戦で優勝して、スケートボードのアンバサダーの仕事をいただき、今回はNGT48の10枚目のシングルの選抜にも入ることができた。

 堀米選手は五輪代表を決めたあと、戦いを振り返って「本当に地獄だった、何をやってもうまくいかない」と漏らしたそうだ。パリまでたどり着いた選手も、敗れた選手もそれぞれの3年間があった。そして、私にもかけがえのない3年間があった。

 だから今、パリで戦う選手たちに他のスケーターの姿を重ねる、自分の姿を重ねる。胸が高鳴るのは、彼らと同じように私も懸命に生きたからだ。もう夢の舞台は目前。すべての日本のスケーターの気持ちを背負う代表の背中に叫びたい気持ちだ。頑張れ! 私も頑張る!

プロフィル

清司麗菜(せいじ・れいな)

 NGT48の1期生。埼玉県出身。「バイトAKB」としてアイドルキャリアをスタートさせ、2016年にNGT48に加入。全国スケートボード施設連絡協議会アンバサダー。趣味はスケボーのほか、歌うこと、筋トレ。Instagramは「@reinaseiji」、X(旧Twitter)は「@official_seiji」。

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