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津波で「消滅」ヨーロッパヒラガキ、貝に夢中の研究員らがSNSきっかけに特定…「岩手の新たな特産品に」

読売新聞 / 2024年7月11日 15時45分

水産技術センターで飼育しているヨーロッパヒラガキを手に取る寺本沙也加さん(9日、岩手県釜石市で)

再生の歩み 東日本大震災

 東日本大震災の津波で国内からいなくなったとされていた欧州原産の「ヨーロッパヒラガキ」が岩手県沿岸で生息しているのが見つかり、9月にも事業化に向けて試験養殖が始まる。県内では海水温の上昇で養殖ホタテの不漁が続いており、試験養殖を行う県水産技術センターやカキ生産者らは「新たな地域の特産品に」と意欲的だ。(釜石支局 三品麻希子、写真も)

 ヨーロッパヒラガキは1952年、養殖用にオランダから持ち込まれた。北海道と青森、岩手、宮城県で試験養殖が行われたが、一般的なマガキにはない独特の渋みなどが敬遠され広く出回ることはなく、2000年代初頭には終了。宮城県女川町にある大学の研究施設で飼育されていた母貝が震災の津波に流され、国内から消滅したとみられていた。転機は昨年春。同センター専門研究員の寺本沙也加さん(29)が偶然、SNSで養殖カキに付着する丸い形の二枚貝を見つけた。初めて見る種類で、写真を投稿した岩手県山田町のカキ漁師のもとに向かった。

 寺本さんらがDNA型や殻の形を調べた結果、「ヨーロッパヒラガキ」と特定し、その後の調査で県内7湾で生息していることがわかった。主に養殖のホタテやマガキに付着していた。研究成果をまとめた論文は5月末に国際学術誌に掲載され、国外から意図的に持ち込まれたカキが天然海域に定着した事例として国内初の発表となった。

 同県陸前高田市出身の寺本さんは、子供の頃からいろいろな形をした貝に夢中で、海辺で貝殻を集めたり、市内の博物館に通ったりしていた。震災は高校1年の時。自宅は津波に流され、集めてきた貝や関連資料を全て失った。それでも貝への情熱は失うことなく、大学生の時には貝の図鑑を出版。22年から同センターで勤務している。

 ヨーロッパヒラガキは外来種のため、試験養殖は、生態系への影響を調査した上で実施する。同センター増養殖部の小林俊将部長(57)は「近年は海水温の上昇でホタテなどが取れなくなり、養殖にも影響が出ている。高い海水温に耐えられるヨーロッパヒラガキが漁業者の収入源の一つになればいい」と話す。

 以前は市場で受け入れられなかったカキだが、欧州では高級カキとしてワインなどに合わせて食されている。寺本さんは「食文化が多様化している今なら、日本でも受け入れられるはず」と期待している。

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