スマート農業 担い手不足を和らげられるか
読売新聞 / 2024年7月12日 5時0分
農業の担い手不足が深刻化する中で、先端技術を活用した「スマート農業」による省力化と生産性の向上が急務となっている。政府が積極的に支援し、普及を図ってほしい。
スマート農業は、人工知能(AI)や、IT、ロボットといった先端技術を駆使した農機の活用などにより、人手がかからないようにして生産性を高めるものだ。
先の国会では、促進するためのスマート農業法が成立した。岸田首相も先月、2025年度からの5年間を「農業構造転換集中対策期間」と位置づけ、スマート農業に関連した新たな支援措置を創設する方針を表明した。
農林水産省によると、農業を主な仕事にする人は24年に約110万人となり、10年前から約3割減った。今後20年間で30万人にまで急減すると推計される。平均年齢も70歳近くと高齢化も顕著だ。
食料安全保障を強化し、安定供給を実現するために、スマート農業の普及を急ぐ必要がある。
新法では、IT技術の活用だけでなく、ロボットが作業しやすいように農場を作り替えるなど「新たな生産方式」の導入を促すため、政府系金融機関が低利融資で支援することにしている。
例えば、アスパラガスの農場で通路の幅を広げたり、リンゴの果樹園で、樹木を直線的に高い密度で植えたりして、自動収穫ロボットが動きやすい農場へと転換することを想定している。
日本は農場の規模が小さい上、中山間地も多く、その分、人手がかかる。この結果、収益性が低く輸入品との競争で負け、担い手が増えない要因にもなってきた。
農場から見直さなければ、農業の立て直しは難しい。新たな生産方式とともに農地の大規模化を進めて収益性を高め、「稼げる農業」へと発展させることが大切だ。
一方、全地球測位システム(GPS)の位置情報を使う自動走行トラクターや、稲刈りに使う無人の自動運転コンバインが実用化されているものの、いずれも価格が高いため普及が進まない。
野菜や果樹の収穫などに使うロボットは技術開発が難しく、企業があまり参入してこない。
新法は、こうした技術の開発を行う企業にも低利融資する。しっかり後押しすることが重要だ。
食料の安定供給の点では、高齢農家が耕作を放棄する問題も深刻である。スマート農業で重労働のイメージを和らげ、農村以外の地域からも若い世代を呼び込み、耕作放棄地を減らしていきたい。
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