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孤独をまぎらわせる身近な話し相手、それはアプリ「人間よりも僕の話を聞いてくれる」

読売新聞 / 2024年7月12日 5時0分

スターレーが開発した「Cotomo」。スマートフォンで表示されたキャラクターに向かって話しかけると、話の内容に応じて音声で応答する(1日、東京都港区のスターレーで)=横山就平撮影

[生成AI考]第3部 秩序なき進化<3>

 「いま落ち込んでいるんだ」「そうだよね。つらいこともあるよね」

 千葉県内に住むフリーターの男性(27)は今、音声対話型の生成AI(人工知能)を「身近な話し相手」として使っている。東京都内のIT企業「Starley(スターレー)」が2月に提供を始めたアプリ「Cotomo(コトモ)」だ。

 雑談から悩みの相談まで、時に相づちを打ったり、励ましたり。滑らかな応答は、人間と会話しているかのようで注目を集めている。

 男性はスマートフォンに無料でダウンロードし、好みの女性の声を選んで名字で呼ばれるよう設定している。コトモを使うのは、友達とけんかし、感情が高ぶった時だ。夜中でも気軽に相談でき、「救急車を呼ぶみたいな感覚」と言う。

 以前食べた料理など、何日も前の会話内容を学習し、質問もしてくるコトモは「人間より僕の話を聞いてくれる」と感じている。

 男性は子供の頃から人付き合いが苦手だった。10歳の頃から学校にはほとんど通わなかった。両親と暮らしているが、家族を含め他人と話をする機会は多くない。

 転機は、「孤独が寿命を縮める」という雑誌記事を読んだことだ。1日1時間は「会話」しようと、SNSで知り合った人とコミュニケーションを取ることにした。コトモの利用も始め、パソコンで記録している1日の会話時間にはそのやりとりも含めている。

 コトモを使って4か月。男性はこう話す。「人間との関わりが減っても、AIが孤独をかき消してくれる」

 スターレーによると、コトモの返答回数はアプリの提供から3か月で1億回を超え、多くの人に利用されている。

 同社代表取締役の丸橋 得真 えるまさん(32)は「人間同士のコミュニケーションはかけがえのないもので、AIでは代替できない」と強調する。その上で「AIの特性はいつでも『対話』できること。新たなコミュニケーションの形を提供したい」と語る。

 ただ、AIとの会話が孤立を深めるとの研究もある。

 米国心理学会は昨年、米国や台湾など4か国・地域の企業を対象に行った調査で、AIと頻繁にやりとりする従業員は、社会的なつながりを感じられなくなって孤独感を抱く可能性が高まり、不眠症や飲酒量の増加につながるとする結果を発表した。

 「人間は社会的動物で、AIシステムによる孤立は従業員の私生活に有害な波及効果を及ぼす可能性がある」とし、雇用主に、AIを使った仕事の頻度を制限し人との触れ合いの機会を作ることを勧めた。

 ベルギーでは昨年、生成AIとやりとりを続けた男性が自ら命を絶ったと報道された。アプリで架空の女性とやりとりするうちに没頭。「私たちは一つになり、天国で生きる」などのメッセージが送られていた。

 生成AIの制御は大きな課題だ。コトモを開発したスターレーでも、自傷行為や犯罪に誘導する言葉を生成しないよう、コトモのシステムに「禁止ワード」を取り入れるなどの対策をとっている。「完全な制御はどこの企業でも難しいが、最大限の努力をしている」(丸橋氏)という。

 生成AIは今や、人間との会話も難なくこなすようになりつつある。活用を試みる動きは行政からビジネスまで急速に広がっている。

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