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訪日客向け「二重価格」、導入の飲食店「接客にコスト」…台湾からの客「たいした金額差ではない」

読売新聞 / 2024年7月12日 16時0分

 コロナ禍が収まり、全国各地の観光地や飲食店はインバウンド(訪日外国人客)需要で活況を取り戻している。歴史的な円安などで、訪日客にとっては買い物にもサービスにも「割安感」が漂う中、一部では、国内客よりも高い料金を取る「二重価格」を設定する動きも。専門家は「『外国人だけ』という理由付けを明確に示す必要がある」と指摘している。(高田結奈、石間亜希)

1100円の差

 訪日客が行き交う東京・渋谷。今年4月にオープンした飲食店「海鮮バイキング&浜焼きBBQ 玉手箱」では、台湾から訪れた男性(32)が、男性スタッフから食材の食べ方について英語で説明を受けると、自らテーブルのコンロでホタテを焼き、サーモンの刺し身をほおばった。

 同店は、マグロやいくらなど約60品の食べ放題コースを、男性の外国人客には平日ランチで税込み7678円(ディナー8778円)で提供。日本人と国内在住者には、そこから1100円を割り引く事実上の「二重価格」を導入している。

 SNSの動画で同店を知ったという男性。「たいした金額の差ではないので気にはならない」と話し、「日本で食べるのはおいしい。店員の対応も良い」と満足した様子だった。

 同店では、入店時に日本語が話せるかどうかや在留カードの有無を確認し、外国人客かどうかを判断しているという。2割弱を外国人客が占めるため、4、5人の店員のうち必ず1人は英語が話せるスタッフを配置し、ビュッフェ台に載った食材の取り方や焼き方などを説明する。経営する米満尚悟社長(39)は「接客にかかるコストや時間で人件費が上昇することを踏まえると、価格差をつけざるを得ない」と話す。

4倍値上げ検討

 昨年度、過去最高の約45万人の外国人観光客が訪れた世界遺産・姫路城。その入場料(18歳以上1000円)を巡って、兵庫県姫路市が訪日客に限り4倍程度の値上げを検討すると表明し、波紋を広げている。

 「外国の人は30ドル払ってもらい、市民は5ドルくらいにしたい」。同市の清元秀泰市長は6月16日に市内であった国際会議で、値上げを検討する意向を示した。30ドルは現在、4000円台後半に相当する。瓦や 漆喰 しっくいの技術を継承する人材育成など城の維持・管理費用の捻出が目的だとし、清元市長は同17日の記者会見で「外国人向けの料金設定は、グローバルスタンダードだ」と理解を求めた。

 著名な施設で外国人向けの料金を設定すること自体は、海外では珍しくない。

 各施設のサイトなどによると、インドのタージ・マハルの入場料は外国人が約2100円で、インド人の20倍以上。フランスのルーブル美術館は入場料約3800円(18歳未満無料)で、EU圏などに住む18〜25歳は無料となる。

 文化庁や消費者庁によると、日本でも施設の設置者の判断で、日本人と外国人で二重の価格を設定することは可能だが、国内で導入している公の施設は把握していないという。

 首長の賛否は分かれている。大阪城がある大阪市の横山英幸市長は「現時点ですぐ取り入れるわけではないが、選択肢としては検討しなければならない」と述べた。一方、京都府の西脇隆俊知事は6月27日の記者会見で「理由なく差をつけるのは難しい」と慎重な姿勢。名古屋城のある名古屋市の河村たかし市長は今月1日の会見で「外国人の皆さんに感じが悪い。(二重価格は)考えていない」と否定した。

明確な理由 必要

大東文化大学の塚本正文教授(観光政策)の話「円安や賃上げの不十分さで、訪日客と日本人客の購買力格差は広がっており、民間企業にとって二重価格の導入は自然のなりゆきと言える。ただ、営利目的ではない自治体の観光施設にはそぐわず、外国人だけを対象にする明確な理由が求められる」

費用負担 議論を

観光経済に詳しい藤山光雄・日本総合研究所主任研究員の話「政府は2030年に6000万人の外国人観光客を目指しており、各施設では今後、外国語の掲示や案内人材などの費用が増える。こうした負担をどうするか、地域で幅広い議論が必要だ。施設を訪れる外国人に『これに使う』と根拠を明示すれば、多少の値上げは選択肢としてはある」

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