スマホばかりで本が読めない...。なぜ仕事と読書の両立は難しい?現代人の"あるある"悩みに迫る。
東京バーゲンマニア / 2024年7月12日 18時0分
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「疲れてスマホばかり見てしまうあなたへ」
スマホは見られるのに、もうずっと本を読めてない......という人は、スマホ社会の現代に少なくないのではないでしょうか。
文芸評論家・三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)という本が、いま注目されています。
本書の筆者は子どものころから「読書の虫」で、兼業での執筆活動をしてきたという三宅さん。社会人になってから、読書をしていない自分にショックを受けたそうです。そこで三宅さんは、「労働」と「読書」の歴史に着目し、人は「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を独自の切り口から深掘りしました。
社会人1年目で痛感したこと
はじめに、働いていて本が読めなくなった自身の体験が書かれています。
社会人1年目のころ、会社に行って帰ってくるだけでもハードな日々で、「そういえば私、最近、全然本を読んでない!!」とショックを受けたという三宅さん。SNSやYouTubeを眺めている時間を読書に充てたらいいと頭ではわかっていても、スマホに手が伸びてしまう。「なんだか自分が自分じゃないみたいだった」と当時を振り返ります。
読書は三宅さんにとって、「人生に不可欠な文化」。しかし、労働と文化(読書に限らず、自分の人生に大切な文化的な時間)の両立は困難であると、痛感したといいます。その3年半後、「本をじっくり読みたすぎるあまり」会社をやめたそうです。
本書では、近代以降の日本の労働史と読書史を並べて、「日本人はどうやって働きながら本を読んできたのか?」「なぜ現代の私たちは、働きながら本を読むことに困難を感じているのか?」を考察していきます。
どうすれば私たちは、働きながら、本を読めるのでしょう。
その問いを突き詰めると、結局ここにたどり着きます。
どういう働き方であれば、人間らしく、労働と文化を両立できるのか?
会社をやめるところまではいかないにしても、これ自分のことだ......と共感した人も多いのではないでしょうか。両立の壁にぶち当たったところから、「労働と読書をめぐる旅路」ははじまります。
読書って「ノイズ」だらけ...だけども...
本書は一気に明治までさかのぼり、大正、昭和戦前・戦中、1950~60年代、1970年代、1980年代、1990年代、2000年代、2010年代と、日本人の仕事と読書のあり方の変遷をたどります。そして最後に「働きながら本を読める社会」をつくるための提言が書かれています。
まず、キーワードの1つ「ノイズ」を見てみましょう。ここでいう「ノイズ」とは、「他者や歴史や社会の文脈」のこと。読書離れといわれて久しいですが、じつは1990年代から自己啓発書の市場は伸びているそうです。それは自己啓発書が、自分でコントロールできる行動の変革を促し、自分ではコントロールできない社会を「ノイズ」として除去するものだから。
しかし、読書はそもそも、自分が知らないことを取り入れるもので、ページをめくった先に何が待っているかわかりません。つまり「アンコントローラブルなエンターテインメント」で、「ノイズ」だらけなのです。
2000年代、インターネットによって生まれた情報が台頭しました。読書で得られる知識とインターネットで得られる情報の違いは、「ノイズ」の有無。スマホは見られるのに本を読めないのも、インターネットは「ノイズ」なしに自分が知りたいことだけを知れるからだと、三宅さんは指摘します。そのうえで強調しているのが、「ノイズ」の大切さです。
大切なのは、他者の文脈をシャットアウトしないことだ。
仕事のノイズになるような知識を、あえて受け入れる。
仕事以外の文脈を思い出すこと。そのノイズを、受け入れること。
それこそが、私たちが働きながら本を読む一歩なのではないだろうか。
「全身」をやめて「半身」で働く
もう1つのキーワードに、「半身(はんみ)」があります。「半身」とは、「さまざまな文脈に身をゆだねる」こと。「働きながら本を読める社会」をつくるために三宅さんは、「全身全霊をやめませんか」「半身で働こう」と読者に語りかけます。そうすることで、自分の「文脈」の半分は仕事に、もう半分はほかのことに使える、としています。
この「文脈」というワードも印象的でした。自分がこれまで生きてきた「文脈」があるように、他者にも、そして一冊の本の中にも「文脈」がある。こうした仕事以外の「文脈」を自分の中に取り入れることが大切で、それこそが「健全な社会」であると、熱く書かれています。
自分の知らなかったことがじつは現代の常識になっていると知り、衝撃を受けた経験はありませんか。そのつもりはなくてもシャットアウトしている「文脈」は、意外とあるのかもしれません。
「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」に対する、「○○だから読めなくなる」「△△したら読めるようになる」という答えだけを知りたい読者にとって、本書は正直、じれったい構成かもしれません。全体のおよそ3分の2まで読んだところでようやく、核心にたどりつくからです。
ただ、今回の読書体験をとおして、なるほど、これが「ノイズ」を受け入れる、「文脈」を自分の中に取り入れる、ということなのだなと思いました。スマホでも何でも、視界に入っていても見ていない物事がいかに多いか、身につまされます。
忙しいとなかなか本を開く気になれないものですが、読みたい気持ちがないわけではないんですよね。仕事と読書の両立が気になって読みはじめたら、思いがけない展開が待っていて、読書の面白さを再発見できる一冊です。
(Yukako)
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