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銀座ママが宮司に転身、「神社検定」に興味持ち勉強するうち勧められ…「人生でそうそうできるものではない」

読売新聞 / 2024年7月13日 6時55分

拝殿前で「すがすがしい気持ちになっていただける場所にしたい」と話す村山さん(奈良県御所市で)

 大阪・北新地や東京・銀座のクラブでママとして勤め、海外で起業した経験もある村山陽子さん(59)が、奈良県御所市楢原の 駒形大重 こまがたおおしげ神社の宮司に就任した。波乱の半生を経て「不思議なご縁に導かれた」。14日、就任を祝う奉告祭に臨む。(中井将一郎)

 奈良盆地や大和三山を望む葛城山麓。 こけむした石段を上ると、風が通り抜け、社を囲む木々がざわざわと揺れた。「この風と、高台のすがすがしさが好き」。境内を掃除していた白装束の村山さんがほほえんだ。

 長野県松本市出身。不自由なかった暮らしは小学1年の時、父親の他界で一変。伯母を頼って奈良のアパートに移り住み、母親は多額の借金を抱えた。小学校高学年の頃、「私が働いて家計を支える」と誓った。

 中学生の夏休み、旅館で住み込みのアルバイトをして「仕事人生が始まった」。高校は早々に中退し、大阪のクラブで働き始め、「交通費以外はすべて家計に入れた」。高級クラブにスカウトされ、借金を完済。父の墓を造り、家も建てられた。23歳で北新地のママに昇進。29歳で独立して店を持った。当時の睡眠は3、4時間だったという。

 働きづめだった34歳の頃「ふと我に返って」、幼い頃から憧れていた亡き父の母校・早稲田大を目指して猛勉強を始めた。結婚が決まると店をやめ、見事合格して35歳で社会人入学。発展途上国の教育を学んだ。卒業後、ドバイで中古車取引の会社を起業。マラリア抑制の仕事も始めた。

 事業が軌道に乗らず、もんもんと過ごす中、もう一度、自分の店を持ちたいと思うように。2015年、銀座にクラブを開いた。ある日、客の男性から「神社検定を受ける」と聞き、興味が湧いて受検。何度か試験会場の国学院大(東京都渋谷区)に通い、神職を目指す白装束の学生を見るうち、神道を本格的に学びたいと考えた。

 店を続けながら20年、神職の資格が得られる同大学の神道学専攻科に入学。翌年には、大学院に進んだ。そんな頃、奈良県選出の国会議員秘書に、駒形大重神社の宮司になるよう勧められた。前宮司が高齢となり、後任を探していたという。

 迷ったが、2年ほど前、初めて神社を訪れ、神聖な雰囲気に心打たれた。平安時代の「延喜式」にも記された由緒ある古社。「歴史あるお社の宮司は、人生でそうそうできるものではない」と就任を決めた。

 店をたたんで今年1月、氏子らと面談。快諾が得られ、4月1日付で宮司になった。氏子役員の一人(70)は「元気で人脈も広い。神社が活気づく」と喜ぶ。

 振り返ると松本市で過ごした幼い頃、祖父が総代を務めた歴史ある神社で、よく遊んだ。「 紆余 うよ曲折のように見えて、こうなるご縁だったのかも」と感じる。「人が集うと神様が喜ぶ。境内では嫌なことを忘れて、ほっとしてもらいたい」

 奉告祭は14日午後3時から。旧知の各界の人らが集い、ソプラノ歌手の新藤昌子さんが君が代を披露する。夕方からは5年ぶりに夏季例大祭を営み、子どもたちが雅楽を奉納する。

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