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あまおう人気に「王国の意地」…「おとめ」に代わり「あいか」が台頭

読売新聞 / 2024年7月15日 5時0分

 [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「イチゴ大国」。

 日本は、和洋様々なイチゴのスイーツがあり、生食での消費量は世界一とされる“イチゴ大国”だ。ユニークな新品種が各地で誕生し、栽培法にも革新が起きている。

国内品種登録数、世界の「半数」

 55年連続でイチゴの収穫量日本一を誇る栃木県。長年「とちおとめ」が主力品種だったが、2024年産から「とちあいか」に切り替わった。県のいちご研究所が開発した新品種で、甘みが増し、縦に切るとハート形に見えるのが特徴だ。

 県内のみで生産しており、作付面積は全体の6割近くに上る。福岡産「あまおう」が高級品種として首都圏でも人気を集める中、同研究所の三井俊宏さん(52)は「王国の意地を見せたい」と力を込める。

 農林水産省によると、国内のイチゴの品種登録数は310種(6月末現在)。世界の品種の半数を占めるともされる。

 国産の品種開発の始まりは明治時代。1900年(明治33年)頃、東京・新宿御苑の農学博士、 福羽逸人 ふくばはやとがフランス産を品種改良し、国産第1号の「福羽」を開発した。当初は皇室用で門外不出だったが、大正時代には促成栽培用の高級品種として全国に広まった。

 その後「福羽」などをルーツに様々な品種が生まれ、“革命”が起きたのが80年代。栃木生まれの「 女峰 にょほう」、福岡生まれの「とよのか」は、従来の酸味が強いイチゴに比べ糖度が増し、人気は全国区に。年明け〜春だった出荷時期も、促成栽培技術の向上により、11月から可能となり、クリスマスにイチゴのショートケーキを食べる習慣が定着した。

 2000年代からは、栃木、福岡の2大産地以外でも「ご当地ブランド」の開発が白熱。様々な品種の交配や突然変異により、淡く白いものや果肉の中まで赤いものなど、個性あふれる品種が各地で生まれ、今や群雄割拠の様相を呈している。

 イチゴのブランド化に詳しい東京農業大の 半杭 はんぐい真一教授(農業経済学)は、「イチゴは品種改良しやすく、値段も安定しているので新規参入しやすい」と説明。「生き残りには、各産地のブランド戦略が試される」とみる。

 イチゴは暑さや日差しに弱いため、夏場は米国産などの輸入に頼っているが、国内産が年中、スーパーで手に入る日も来るかもしれない。

 新潟県新発田市の新興企業MD―Farmが、山形県内で建設を進めるのがイチゴ栽培工場(400平方メートル)だ。発光ダイオード(LED)と専用の培地、溶液を使った独自システムで、完全無農薬で安定生産でき、授粉用のミツバチも不要という。

 「工場なら季節を問わず栽培できる」と松田祐樹社長(50)。光の強さや温度などを調整することで「甘さや大きさも自由自在に変えられる」という。来年にも本格生産を始める予定だ。

 日本人の「イチゴ愛」も深化している。調査会社マイボイスコムが今年6月に行った「好きな果物」の調査(複数回答、回答数約9400件)で、イチゴは72.1%の支持を集め、桃や梨を抑えてトップとなった。同調査は13年から5回目で、いずれもイチゴが首位だ。「甘くて一口で食べられる」「色んなスイーツに利用できる」が“推し”の理由となっている。

 最近では、SNS映えする色鮮やかさから「イチゴあめ」が若者らの間で人気となるなど、話題に事欠かないイチゴ。農家と新品種の開発にも取り組むフードジャーナリスト里井真由美さんは、「種類が豊富で食べ方も様々なイチゴは、もはやエンターテインメント。日本からイチゴ文化がもっと発展していくのでは」と期待している。

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