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「『言の葉』にのせたメッセージ」垂(たるみ)秀夫さん 対中外交 考え抜いた言葉

読売新聞 / 2024年7月19日 15時30分

 戦争は「外交の敗北」であり、外交官は他国と関係が悪化しても破綻を回避するため交渉する。任地でのスピーチでは効果的なメッセージを心がける。昨年まで駐中国大使を3年間務めた著者は「言葉は外交官の武器だ」と語る。北京などでのスピーチを収めた本書は「外交官人生の集大成」という。

 対中外交ほぼ一筋の経歴を持つ著者は、「中国に物申す大使」として知られ、レセプションでのスピーチから「日中友好」の文言を極力排した。中国に都合の良い美辞麗句と考えていたためで、部下が原案に盛り込むたびに削除したという。

 中国当局の不透明な法執行に不安を抱く日本人は多い。北京で昨春、アステラス製薬社員が反スパイ法違反容疑で拘束された直後のレセプションでは、「日中関係の花は人的往来と経済関係という2本の木から咲いてきた。その木が倒れるのではないかと案じている」と訴えた。

共感を得られるよう心を砕く

 北京の日本大使館で開くレセプションは中国の企業関係者や知識人の参加も多い。スピーチでは、共産党の強権手法に違和感を抱く人の共感を得られるよう心を砕いた。「外交官がどんな言葉を使ってもいいわけではない」というのが持論で、中国の古典や初代首相・周恩来の言葉を引き、問題意識を中国側に投げかけた。

 時に相手国の国民をどう喝するかのような言葉を繰り出す中国の「 (せん) (ろう)」外交官には、こうした配慮が見られない。最近も、中国の駐日大使が台湾情勢に絡んで「日本の民衆が火の中に連れ込まれる」と述べた。

 日中対立の最前線に立ちつつ、2国間関係の安定に資することを目指して著者が考え抜いた言葉を収めた一冊は、中国と関わる人の参考になりそうだ。(日本僑報社、1980円)比嘉清太

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