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街から消えた鮮魚店、代わりに登場したのは対面重視のシン「魚屋さん」…決め手は鮮度と情報発信

読売新聞 / 2024年8月15日 14時0分

 昔ながらの街の魚屋さんが減少する一方で、対面販売や品ぞろえを重視したユニークな鮮魚店が登場し、人気が高まっている。

まるで魚のテーマパーク「角上魚類」

 「このホウボウってどうやって食べるの?」

 「塩焼きがおすすめです。塩をふってグリルで焼いてみてください」

 6月下旬、埼玉県内にある鮮魚専門チェーンストア「角上魚類」草加店の「対面コーナー」では、ケースの氷の上に一匹丸ごとの魚が60種類ほどずらりと並び、客が調理法を尋ねていた。

 ホウボウのほか、クロムツやノドグロ、コチ――。大手スーパーでは見かけない魚種がたくさんある。新潟や東京・豊洲でその日水揚げされた新鮮な魚をバイヤーが買い付け、午前中から店頭に並べる。購入された魚は無料でさばく。別のコーナーには刺し身、すし、総菜、弁当も並び、様々なニーズに対応する。

 東京都内からやってきた男性(41)とその妻(25)は「おいしそうな魚を自分の目で吟味できる」と楽しそうだ。

 広い店内のあちこちに店員が立ち、客に丁寧に説明する。知識が深く、接客能力が高い「親切係」も配置する。店長の小笠原洋介さんは「食べ方や調理法を直接お話しし、おいしさを伝えたい。地域一の魚屋さんになりたい」と話す。運営する角上魚類ホールディングス(新潟県)は首都圏を中心に23店舗を展開する。

魚食文化の伝達拠点だった鮮魚店

 街の魚屋さんが激減している。経済産業省などの統計によると、1976年に6万店近くあった鮮魚店は、2021年には約1万店にまで減少した。

 鮮魚店は新鮮な魚を多く並べ、対面によるコミュニケーションでおすすめの魚や調理法を紹介するのが特徴だ。「客は店の人と会話しながら何の魚を買うか決め、さばき方も見て覚えた。魚に関する知識を伝えて需要を喚起し、購買意欲を高める鮮魚店は魚食文化の伝達拠点だった」と北海学園大教授(水産政策)の浜田武士さんは指摘する。

 しかし、大型スーパーが拡大し、鮮魚店は減少した。スーパーでは、コスト削減のため、対面販売のない鮮魚売り場が主流になった。扱う商品も、売れやすい定番の魚を中心に、冷凍保管できるサケやサバなどの切り身やマグロなどの刺し身、一夜干しなどの加工品が並ぶ。

おしゃれなカフェ風「今だからこそ」

 都内に8店舗を構える鮮魚店「サカナバッカ」も丸魚を中心に並べ、対面で販売する。都立大学店は青と白を基調としたガラス張りで、おしゃれなカフェのようだ。魚屋さんの従来のイメージを覆し、幅広い世代に気軽に入店してもらえるよう、「店が少なくなった今だからこそ受け入れられる魚屋さん」を目指している。

 店長の見元拓さんは「地域の魚食文化を支える旗艦店でありたい」と語る。

 魚への関心を高めようと、魚種だけでなく、例えばマグロの皮など珍しい部位も並べる工夫をする鮮魚店もある。

 北海学園大の浜田さんは「店で鮮度の良い魚を購入して食べる経験が少なくなっている。だからこそ、昔ながらの対面販売を行い、新鮮な魚を並べる鮮魚店に希少価値が出て、人気が集まっている。対面販売などのコミュニケーションを重視することが魚食文化の復活のカギを握るのでは」と話す。

ローカルスーパー 「地魚」が人気

 地域に密着した「ローカルスーパー」には鮮魚に力を入れる店もある。海辺に近いところでは、近隣の定置網業者から直接仕入れるなどして、地元でとれる「地魚」の取り扱いを充実させる店も。

 福島県や茨城県でスーパー37店舗を展開する「マルト」(福島)は、地元でとれた「常磐もの」を市場から積極的に仕入れて店に並べている。

 活気ある鮮魚コーナーには、地元住民だけでなく、飲食店関係者が訪れることもある。担当者は「最近は、遠方からのお客様も増えています」と話す。

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