ネットの偽情報 事業者に対策を徹底させよ
読売新聞 / 2024年7月17日 5時0分
インターネットを通じて虚偽の情報が拡散する状況は放置できない。政府は、巨大IT企業が有効な対策を徹底するように、制度の整備を進めていくべきだ。
総務省の有識者会議は、ネット上での偽情報や誤情報の拡散を防ぐため、SNSを運営する巨大ITなどに対し、投稿の削除などの対応を迅速に行うよう求める報告書案をまとめた。
偽・誤情報の発信を繰り返す人の投稿を削除し、アカウントを停止するほか、新たに削除などの対応基準を策定するよう求めた。
また、事業者が窓口を設置して、行政機関などからの違法な投稿に関する通報を受け付けることとし、投稿を削除するか否か、速やかに判断するよう要請した。
政府は、これまで偽・誤情報への対応を、フェイスブックを運営する米メタや、X(旧ツイッター)といった事業者の自主的な取り組みに委ねてきた。
だが、偽・誤情報や偽広告は広がる一方で、看過できない状況だ。政府が主導して対策の強化を図っていかなければならない。
実際、1月の能登半島地震では、SNS上で、倒壊家屋の中で動けないと訴える虚偽の投稿や、実在しない地名への救助要請が発信され、警察や消防を混乱させた。
東日本大震災の津波の動画を加工したとみられる映像を、能登半島地震の被害であるかのように発信したケースもあった。
総務省は当時、事業者に投稿の削除など適切な対応を要請したが、法的な根拠がないため、偽情報を十分に排除できなかった。
政府は、報告書案を踏まえ、事業者に有効な対策を確実に実行させる具体策を練る必要がある。日本では現状、米巨大ITから、この問題で、十分な協力を得られていないとの指摘があるからだ。
個人への
偽・誤情報の拡散を防ぐ際には「表現の自由」を尊重することが前提だが、公共の利益を害することは許されない。
欧州連合(EU)は、2022年に施行したデジタルサービス法で、巨大ITに偽情報への適切な対応を求めている。4月には、メタへの調査を始めると発表した。巨大ITへの規制で先行するEUの例も参考にしていきたい。
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