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夢の億万長者か?現実の数千万円か? 「サマージャンボ」どう狙う...「宝くじ研究家」がすすめる組み合わせ(1)/ニッセイ基礎研究所 主席研究員・篠原拓也さん

J-CASTニュース / 2024年7月16日 19時22分

夢の億万長者か?現実の数千万円か? 「サマージャンボ」どう狙う...「宝くじ研究家」がすすめる組み合わせ(1)/ニッセイ基礎研究所 主席研究員・篠原拓也さん

宝くじで夢を見よう!(写真はイメージ)

夢の億万長者を目指して一攫千金にかけるか、100万円~5000万円の高額金を狙うか。

1等と前後賞を合わせて7億円のサマージャンボ宝くじと、同5000万円のサマージャンボミニが2024年7月8日から発売された(8月8日まで)。

どんな組み合わせてジャンボとミニを買えばよいのか。確率と統計の専門家で、宝くじの大ファンでもあり、研究リポートを数多く発表している篠原拓也さんに「攻め方」を聞いた。

ジャンボの「ドキドキ」、ミニの「ワクワク」

ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也さんがまとめたのは、「サマージャンボ2024の狙い目 ジャンボにもミニにも3年ぶりとなる高額の当せん金が設定された」(2024年7月8日付)というリポートだ。

篠原さんは、今年のサマージャンボ宝くじの特長をこう説明する。

サマージャンボ宝くじには、「ジャンボ」と「ジャンボミニ」の2つがある。まず、「1等・前後賞合わせて7億円」のうたい文句で発売されるジャンボから見ていくと、昨年と比べた主な変更点は次のとおりだ。

(1)2等が5万円から100万円に引き上げられた。
(2)その一方で、1万円の3等の当せん本数が昨年の10分の1に減少。
(3)これらの結果、1ユニット(くじ1000万枚)あたりの当せん本数は111万202本から110万1202本に減少。

つまり、100万円を増やし、1万円を減らす組み換えが行われたわけだ。最近、100万円以上の当せんに比重をうつすのは〇〇ジャンボのトレンドになっている。今回のジャンボは、7億円の一攫千金を中心に、100万円以上も狙う「超高額当せんのドキドキ感を楽しむくじ」になったといえる【図表1】。

ミニのほうはどうか。昨年に比べ、主な変更点は次のとおりだ。

(1)1等を2000万円から3000万円に引き上げると同時に、1等の前後賞を500万円から1000万円に増額し、1等・前後賞合わせて5000万円とした。
(2)その一方、100万円の2等の当せん本数を1ユニットあたり、700本から200本に減少。
(3)さらに、1万円の3等を新設した(1ユニットあたりの当せん本数は1万本)。

この結果、ミニで100万円以上が当たるくじの本数は、1ユニットあたり230本となった【図表2】。これは、ジャンボ(同103本)の2倍以上だ。ミニは、5000万円を狙いつつ、100万円にも軸足を移した、「高確率で高額当せんのワクワク感を味わうくじ」と位置づけられるという。

注目したい点は、両者の「1万円」と「100万円」が当たる確率だ。

ジャンボでは「1万円」が0.01%、「100万円」が0.001%、ミニでは「1万円」が0.1%、「100万円」が0.002%。ミニのほうがジャンボより「1万円」で10倍、「100万円」で2倍確率が高い。つまり、手が届きやすい1万円~100万円を狙うならミニということになる。

「7億円」のドでかい夢に賭けるか、それともミニで5000万円の夢を追いつつ、しっかり100万円以下のお小遣い&ボーナスもゲットするか――。ジャンボとミニを何枚ずつ買うか、組み合わせを考えたいところだ。

篠原さんは、こう結んでいる。

「いろいろ考えているうちに、ドキドキ感とワクワク感を味わうことができれば、幸せな時間を過ごすことができる。この段階で、すでに宝くじを堪能することができたといえるかもしれない」

「宝くじ」で確率の面白さを知ってほしい

J‐CASTニュースBiz編集部は篠原拓也さんにさらに詳しく話を聞いた。

――毎年、いろいろなジャンボ宝くじ発売の前に、研究リポートを発表しているのはなぜでしょうか。「宝くじ」がよほど好きなのですか。

篠原拓也さん 大好きです。ジャンボ宝くじは毎回買っています。ただ、研究している割には当たらず、最近では7等が一度当たったきりですね(笑)。

宝くじのリポートを発表しているのは、多くの人に確率のことをぜひ知ってもらい、興味を持ってほしいからです。高校の数学で習ったきりになっている人が多いのではないでしょうか。

世の中のことは、「イエス」か「ノー」が二者択一ばかりではありません。「7割賛成だが、3割反対だ」というグレーゾーンのことが多くあるでしょう。確率の世界がまさにそれで、その最もわかりやすい例で、みんなの関心が高いのが宝くじだからです。

――私が高校で確率を最初に教わった時、数学の教師が「このクラスの中に誕生日が同じ人がいる確率は100%だ」と言って驚いたものです。1年が365日で、誕生日は365通り。ところが、クラスの人数は約50人ですから、偶然としても100%はあり得ないと思いました。

すると教師は「1月生まれの人、手を挙げて」と、順番に生まれた日を言わせることを続けました。5月生まれのグループでひと組、10月生まれのグループでもうひと組、誕生日の一致が出て、「おー!」とクラス中がどよめきました。

篠原拓也さん その数学の教師はいい先生ですね。今のような話が、確率の面白いところです。1クラスに23人いれば、同じ誕生日の人がいる確率は50%を超えてきます。

――宝くじで1等に当たる確率は、今回のジャンボの場合、0.00001%。つまり、1000万人に1人の確率です。それなのになぜ、人々は暑い中、人気の売り場に行列を作ってまで宝くじを買おうとするのでしょうか。

篠原拓也さん 夢とお金がからむと人間は真剣になります。確率が絶対にゼロではないというところがポイントで、「ひょっとしたら、当たるかもしれない!」と思わせる魅力が宝くじにあります。また、「買わなければ、当たらない!」ことも真実です。

人間心理として、確率が高い場合は過小評価して、低い場合は過大評価するという行動傾向があります。これは、心理学と経済学をミックスした行動経済学の分野で言われている「プロスペクト理論」です。

たとえば、天気予報で降水確率が「40%」と報道されると、肌感覚での確率とだいたい一致しますが、降水確率が「70%」と報道されると、「まあ、大丈夫だろう」と甘く考えて傘を持たない人がけっこう出てきます。確率を過小評価するためです。

人間は低い確率ほど「過大評価」する

――なるほど。実際の確率と、人間の肌感覚の確率にズレがあるということですか。

篠原拓也さん プロスペクト理論の例として、よく用いられるのが宝くじです。

宝くじで一等が当たる確率は数千万分の1と、冷静に計算すればゼロに近い数字なのに、「自分なら当たるかもしれない」と、非合理的な購買行動に走ります。つまり、確率が低い場合ほど「過大評価」してしまうのです。

宝くじの場合、頭では「確率は非常に低い」とわかっているのですが、「1%」の確率も「0.00001%」の確率も、肌感覚ではその差を実感できないので違いはありません。だから、「過大評価」して売り場に走ることになります。また、宝くじを売る側のビジネスも巧みですよね。

――どういうことでしょうか。

篠原拓也さん 売り場には、よく「この売り場から3億円出ました!」などと当せん実績が掲げてあります。それを見て、「あっちでも当たっている。こっちでも当たっている。よし、自分も!」という錯覚に陥る効果はとても大きいです。

夢をどこに置くかで、ジャンボとミニの割合を配分

――さて、今回のサマージャンボ宝くじですが、ズバリ、こうすれば当たる可能性が高まるというおススメの買い方は何でしょうか。

篠原拓也さん こうすれば儲かりそうだという方法があれば、私も実践していますが、残念ながらそういう方法はありません。

ただ、こうすれば宝くじをよりドキドキ、ワクワク楽しめるという方法があります。

「7億円」の高みを目指して「億万長者」を目指すなら、10枚中7、8枚をジャンボにするとか、買う割合を増やしましょう。一方、もう少し額が低い、現実的に100万円以上~3000万円クラスを狙うなら、たとえば100万円が当たる確率はミニのほうがジャンボの2倍ですから、ミニの割合を7、8枚に増やすといいでしょう。

自分の夢をどこに置くかによって、ジャンボとミニの割合を7対3、6対4、4対6、3対7という風に配分するのです。

――株式購入のポートフォリオ(運用資産の構成内容)のような感じにするわけですか。

篠原拓也さん 考え方はそのとおりですが、もし宝くじが株ならとんでもないジャンキー株ということになってしまいますよ(笑)。あくまで儲けようとは思わず、抽せん日まで夢を楽しむ気持ちを持ち続けてください。どういう配分にするか、あれこれじっくり考える過程も夢を見る楽しみの1つです。

億万長者521人誕生、合計883億円ゲットした売り場

――バラ売りと連番は、確率的に違いはありますか。

篠原拓也さん 確率的には同じですが、楽しみ方が違います。1枚、1枚ワクワク感を少しでも長く楽しみたい人はバラ、早く結果を知りたい人は連番です。ただ、バラは前後賞がないので、ジャンボの場合の「7億円」は無理です。

ただし、1等の前後賞の「1億円」だけが当たる可能性があります。連番で末尾が0~9番号のくじを買った場合は、「1億円」だけが当たるのは1等と前後賞が「0」と「9」で分断されたときだけです。でも、バラで買ったときは「1億円」だけが当たる可能性が常にあります。

――売り場の当たり外れもありますか。私はいつも東京銀座にある日本一の売り上げを誇る「西銀座チャンスセンター」で買っていますが、ここは地方からも代表者がまとめ買いに訪れ、いつも長蛇の列です。

最新のウェブサイトをみると、「平成から令和にかけて億万長者が521人誕生、合計883億円ゲット」とありました。

篠原拓也さん 確率的にはどこで買っても全く同じです。ただ、地方から上京して東京観光を楽しみ、銀座で宝くじを並んで買い、お土産として郷里の人々に持って帰るとは、なんと、素晴らしい宝くじの楽しみ方でしょうか。

<夢の億万長者か?現実の数千万円か? 「サマージャンボ」どう狙う...「宝くじ研究家」がすすめる組み合わせ(2)/ニッセイ基礎研究所 主席研究員・篠原拓也さん>に続きます。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
篠原 拓也(しのはら・たくや)
ニッセイ基礎研究所保険研究部主席研究員兼気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト兼ヘルスケアリサーチセンター主席研究員

1992年日本生命保険相互会社入社、2014年ニッセイ基礎研究所へ。
研究分野・専門分野:保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務。
保険商品の開発や価格戦略をベースとして、保険事業の経営・リスク管理全般を研究している。特に最近は、気候変動問題が保険事業に及ぼす影響について、多面的に調査や研究を進めている。

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