「都心の再開発に6000億円・ホテルレジャーに3000億円投入、M&Aも進める」…西武ホールディングス・西山隆一郎社長
読売新聞 / 2024年7月17日 16時8分
西武ホールディングスは、軽井沢と箱根を中心に、リゾート開発への投資を強化する。国内のリゾート開発の草分け的な存在で、山手線内側の1・5倍に相当する土地を全国に保有している。観光や不動産の戦略について、西山隆一郎社長に話を聞いた。(聞き手・鈴木瑠偉)
リゾート地、まだ未開発のエリア
――10年ぶりに長期戦略をまとめた。
「10年間に1兆2000億円くらいの資金が入ってくると見込んでいる。これを設備投資や成長投資、株主還元にあてる。都心(高輪、芝公園など)の再開発に6000億円、ホテルレジャーに3000億円、リゾート開発に700億円を投じる。
M&A(企業の合併・買収)も考えている。今ある資産を再開発して、新規物件も取得する。価値を上げて流動化させる。M&Aや新規物件の取得で2400億円くらいを使う。株主還元では機動的な自社株買いを行う。成長投資を優先しつつ、株主には安定的に還元するそういった形になる」
――ホテル、レジャー、リゾートの開発に向けた考えは。
「再開発では軽井沢、箱根、日光、富良野。リゾート地として我々が培ってきたメッカといえる場所ではまだ未開発のエリアが残っている。日光はプリンスホテルを閉じたままの状況になっている。軽井沢の千ヶ滝も。
不動産回転型ビジネスのキャピタルリサイクルと言っているが、価値を上げる。(資産を売却する)流動化したりして得た資金をたとえば、リゾート地の投資に振り向ける。経済的な価値だけでなく、エコというか、環境にも価値が求められている。
千ヶ滝で何をやるかはこれからだが、人々が訪れて滞在してほっとする場所。軽井沢で英気を養いあしたも頑張ろうと。西武グループの施設を使って元気によみがえったと思われるようなことをやっていきたい。今回の千ヶ滝では、野村不動産と一緒に進める」
――リゾート開発は停滞していた。
「コロナ禍ではそうだ。投資を抑えざるを得なかった。今後3年間は若干控えめだと考えているが、設備投資先行、種まきの時期だと思っている。今まで控えざるを得なかった部分をやっていく。未利用地は山林、原野を含めて結構ある。
森林を残しながら開発を進める。保全すべき所は保全する。箱根には老朽化したコテージがある。リゾートとしての可能性は広がっている。
わが社は証券取引所の区分では鉄道だが、不動産を核にしたい。ほかの不動産事業者と比較すると、リゾート地で圧倒的な資産を持っている。都心では、紀尾井町(千代田区)もそうだが、普通では考えられない規模の資産がある。大きなアドバンテージだといえる。
回転型ビジネスでは後発組だが、急ピッチで追いついていく。不動産マーケットはモノがないといけない。あれば圧倒的に有利だ。リート市場は20年間で急成長した。海外から魅力的だとみられている。お金がある人だけが参入できる株式市場とは違う。
箱根や軽井沢が成功例になった自負がある。100年かけて地域作りをしている」
資産流動化、次の成長投資に
――「赤プリ(グランドプリンスホテル赤坂)」跡地の売却が話題になった。
「売却だけが独り歩きしているのは少し不本意なところはあるが、象徴的な場所だった。我々が考えているのは、キャピタルリサイクルを進めるうえでの最大の原動力だと位置づけている。資産を流動化させて、次の成長投資に回していく大きな力になる。
ホテルの収入と(居住部分)レジデンスの賃貸収入、オフィス賃料収入は安定的に入る。だが、それに安住していてはいけない。自ら開発した都市を流動化させて、そこで得た資金で次の場所に投資する。高輪(品川区)もそうだ。
あらゆる地域社会、日本経済にも貢献する。細々と賃料収入だけを考えていてはダメだ。社員の活躍できる場所も増える。企業の成長利益は後からついてくる。トータルステークホルダーという言葉で表現している。その手段が不動産事業の回転型ビジネスだ。
将来の持続的な成長に向けた必要な決断だった」
――売却交渉は順調か。売却後の関わり方は。
「プロセスの真っただ中にある。機関投資家や国内の事業会社といったところが参加している。年内には契約に持っていきたい。
後の関わり方は、検討中だ。トータルで考えていきたい。基本的にはホテルも不動産も何らかの形で関わることを視野に入れている。今は明言できない」
――五感を揺さぶる感動体験を目指すという。
「施設と人間とDX(デジタルトランスフォーメーション)を最大限活用して感動を提供したい。たとえば野球の球団を一つ持っている。アイスショー、フィギュアスケートもある。所沢にある西武ライオンズの本拠地、ベルーナドームと新横浜の横浜アリーナを持っている。
所沢には累計で1000億円くらい投資している。ベルーナドームはボールパーク化を進めてきた。車両工場の跡地には大型商業文化施設『エミテラス所沢』が開業する。赤プリ、紀尾井町と同じ規模の資金を投じる。球場で提供するグルメも人気だ。横浜アリーナの稼働は年300回以上ある。横浜市とも連携したい。
西武鉄道にも大規模な投資をする予定だ。沿線にはムーミンバレーパークや豊島園のハリーポッタースタジオツアーもある。ドラえもんを車体に描いた列車も評判だ。アニメとも連携したい」
◆西山隆一郎氏(にしやま・りゅういちろう)
1987年横浜国立大経卒、第一勧業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行、2009年西武ホールディングス入社。23年4月から社長。みずほ時代を含め、広報部門が長い。幼い頃はサッカー少年で、今もスポーツ観戦が趣味。神奈川県出身。
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