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「もったいないをおいしいに」…廃棄していた下仁田ネギの苗、活用拡大へ拠点整備

読売新聞 / 2024年7月18日 16時2分

下仁田ネギの植え替え作業を手伝う萩原さん(中央)(4月30日、群馬県下仁田町馬山で)

 下仁田ネギの栽培過程で捨てられる苗を具材にした冷凍ギョーザ作りが、群馬県渋川市の農園を中心に行われている。取り組みが3年目を迎えた今年はさらに資源の廃棄を減らそうと、ギョーザ以外に活用するための拠点整備にも乗り出した。農園代表の萩原久子さん(47)は「下仁田ネギを苗もおいしく食べてもらえるように、様々な活用法を提示したい」と話す。(桜木優樹)

豊かな香り

 萩原さんの「ハギーズファーム」(渋川市北橘町小室)はコメやニンジンなどを栽培するほか、野菜を使った加工食品の企画・開発を行っている。

 冷凍ギョーザ作りのきっかけは3年前。「下仁田ネギは苗もおいしい」と聞いた萩原さんが真相を確かめるため、知人で下仁田町馬山の農家の男性(76)を訪ねると、切ない表情でこう返された。「毎年5月は旬でおいしいが、多くは処分している」

 下仁田ネギは秋に種をまき、翌年の春と夏に2度、ネギを引き抜いて植え直してから冬に収穫する。根に刺激を与えて新鮮な葉をつけさせるための作業だが、その際、曲がっていたり小さかったりする苗を取り除く。男性の畑では春の植え替え時、こうした規格外が毎年全体の2割ほど、約3000本発生する。苗は甘さと豊かな香りが特徴で、男性はネギみそやみそ汁で食べていたが、多くは廃棄していた。

スーパーと道の駅で

 萩原さんが「もったいないをおいしいに変えたい」と県内の複数の食品会社に苗の活用方法を相談すると、太田市のギョーザ製造会社での商品開発が決定。2022年夏、刻んだ苗をふんだんに使った「若殿下仁田ねぎみそ 餃子 ギョーザ」を、前橋市の農産物直売所で販売した。

 23年には県内のスーパーと道の駅計7店舗に販路を広げ、約400袋を販売。約100キロの苗を提供した男性は「生育不良のものがお金になってありがたい」と話す。

増える笑顔

 ギョーザ作りには、食品ロス削減以外の狙いもある。

 地域の子どもや親の居場所作りにも力を入れる萩原さんは、実家だった古民家を地域の人が気軽に集まれる場所としてほぼ毎日開放。料理教室も毎月開催しており、ギョーザの売り上げの一部は活動資金や寄付に充てている。

 ギョーザのパッケージに描かれた虹の絵は、萩原さんの長男で重度の知的障害を持つ 千稀 かずきさん(20)が描いた。萩原さんは「ギョーザの製造、販売を通じて笑顔になる人を少しでも増やしたかった」と話す。

 受注生産にした今年は約100袋を製造したが、ギョーザ以外にもネギの苗を使った食品を手がけようと、5月頃から古民家の調理場を改修。年内にも、食品の開発や製造を行う拠点にするつもりだ。笑顔の輪を、さらに広げていくことを目指している。

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