Visaが自社の照会システム利用を取引先に強要か…競争阻害で割高な手数料、キャッシュレス化の遅れにも
読売新聞 / 2024年7月17日 22時49分
公正取引委員会は17日、クレジットカードの国際ブランド「Visa」(米国)の日本法人に対し、独占禁止法違反(不公正な取引方法)容疑で立ち入り検査を行った。自社が提供する信用情報の照会システムの利用を取引先に強要し、ライバル会社との契約を不当に妨害した疑いがあるという。クレジットカードの取引を巡り、公取委が同法違反容疑で調査を行うのは初めて。
立ち入り検査を受けたのは「ビザ・ワールドワイド・ジャパン」(東京)。今後は、関与が疑われるVisaやシンガポールの法人に対する調査も進める方針だ。
不正利用や限度額の超過などに関する信用情報の照会は、飲食店などとVisaブランドのカード利用契約を結んだ「加盟店管理会社」が、利用者の会員管理などを担う「カード発行会社」に対して行う。問題なく決済が成立すれば、加盟店管理会社が、カード発行会社に決済手数料を支払う。手数料の金額はVisaなどの「国際ブランド」が決める。
関係者によると、Visa側は遅くとも数年前から、照会に自社のシステムを使うよう加盟店管理会社に要求。NTTデータ(東京)などライバル会社のシステムを使った場合は、決済手数料を引き上げると伝えていたとみられる。管理会社側は手数料の上昇で利益が減ることを恐れ、要求に従わざるを得なかったという。
公取委はこうした行為が独禁法の禁じる「拘束条件付き取引」や「競争者に対する取引妨害」などに当たるとみて調査する見通しだ。
適正な手数料実現へ、早期の実態解明を
公取委がVisaの日本法人に対する立ち入り検査に踏み切った背景には、カード決済に伴う手数料の高さが、飲食店など中小事業者が新規導入をためらう障壁になっている現状がある。
政府は、キャッシュレス決済の比率を2025年までに4割程度へ引き上げる目標を掲げる。23年には10年前から24ポイント増の39・3%(126兆円)に到達。うち8割超(105兆円)をクレジットカードが占める。
公取委は22年、手数料の引き下げを促す内容の報告書を公表し、Visaなどの国際ブランドに要請して手数料の算出基準も公開させてきた。そうした中で、Visa側が取引先に圧力をかける競争制限が高止まりの要因だとすれば、看過できない。
キャッシュレス化が遅れれば、消費者の利便性も損なわれる。適正な手数料に基づく取引を実現するため、公取委による早期の実態解明が求められる。(糸井裕哉)
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