1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「バカの佐々木」の大逆転劇…夜遊びにハマる高校時代、ラッパー・宇多丸はいかにして早稲田大学に受かったか

読売新聞 / 2024年7月19日 10時0分

ラッパー・ライムスターの宇多丸さん

 中学時代はクラスにも部活にも居場所がないと感じていたヒップホップグループ「ライムスター」のラッパー・宇多丸さん(55)。高校進学を機に「夜遊び」に目覚める。(読売中高生新聞編集室 鈴木経史)

最高の空間

 「全然興味を持てなかったサッカー部は続けず、代わりに当時流行していたディスコやクラブに通うようになりました。そこでは、かっこいい音楽が大音量でかかっていて、みんなが踊ってる。もともと音楽、なかでもダンスミュージックが好きだった僕からすると、最高の空間でした。しかも、同世代の女の子がいっぱいいるんですよね。イケてない男子校の学生にとっては『天国か?』って感じでした(笑)。あ、もちろん当時も未成年がクラブに行くのはNGですからね! みなさんはマネしないように!! 僕の場合は、もう時効ということで…(笑)。

 僕が高校時代を過ごした1980年代の後半は、ヒップホップ、レゲエ、ハウスといった、ストリート発の新しい音楽が 台頭 たいとうし始めた頃でした。それまでのラグジュアリー(豪華、ぜいたく)な文化に対して、よりカジュアルで、よりアンダーグラウンドで、より自分たちに近い文化が濃厚になっていった時期です。そういう新しい文化の流れにすごく可能性を感じて、ようやく自分が本当に好きで、元気になれるものに出会えた感覚がありました。

 何よりも夜遊びをしてよかったのは、『学校の外にある世界』に気づけたことです。部活を辞めてバカにされていたような友だちが、街の中では世慣れていてカッコよく見えたり、その場で知り合った大人たちと仲良くなったり。夜遊びという新しいチャンネルができたことで、学校の狭い人間関係の中で圧力を感じていることが本当に無意味に思えて、気持ちが解放されました」

バカの方の佐々木

夜遊びによって 鬱屈 うっくつ した毎日から解き放たれた一方、次第に近づいてくる大きな壁と向き合わなければならなくなる。「大学受験」だ。

 「毎日映画を見たり、本を読んだり、クラブに潜り込んだり、ひたすらサブカルチャーを吸収する日々。もちろん学校の勉強は全然できませんでした。僕の本名は佐々木士郎というんですが、同じ名字の同級生がいて、僕は『バカの方の佐々木』なんて呼ばれているほどでした。

 ただ、もう中学時代までのように自分が嫌なことを我慢してやりたくはなかった。だから得意科目を伸ばすことにしたんです。調べてみると、私大の文系学部は国語、英語、社会の3科目で受験ができると知りました。 さいわい国語は得意で、英語も頑張ればいけそう。社会は公民なら、大人の社会常識レベルのことしか問われない。そこに狙いを絞って、数学とか物理とか苦手な科目は全部捨てて、自分の得意な勉強だけやったんです。

 この時間は遊び、この時間は勉強っていう具合に、自分をコントロールして、得意科目だけ勉強していると、模試とかでも悪くない結果が出るようになってくるんですよ。すると、先生や同級生も『佐々木すごいじゃん!』って驚くし、だんだん勉強が楽しくなっていったんです」

直前までクラブ通いも続けながら、迎えた受験本番。宇多丸さんは早稲田大学法学部に合格を果たす。

 「早稲田の法学部を選んだのは、なにか勉強したいことがあったからというわけではなく、自分が受けられる学校のなかで一番偏差値が高かったから(笑)。でも、中高6年間を『バカの佐々木』とか『サッカーできない佐々木』として扱われてきた僕にとって、大学に合格できたことは最高の勲章でした。夜遊びをしながら、きちんと自分をコントロールして、結果が出せたわけですから。だから、その反動で、『はあ? 全部オレが正しかったじゃねえか!』って、完全に調子に乗っちゃってましたね(笑)」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください