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自家用車を使い有償で送迎「ライドシェア」、利用しますか?

読売新聞 / 2024年7月19日 9時56分

 一般ドライバーが自家用車を使って有償で送迎する「日本版ライドシェア」が4月に始まりました。地域交通を補う「移動の足」として、タクシー会社以外も参入できる「全面解禁」の是非も焦点となっていますが、安全面なども課題となっています。あなたは、利用しますか?

[A論]「移動の足」を確保…運賃はタクシーと同等

 「地方はタクシーが少なく、移動のための車が見つかりやすくなるのは便利。全国で取り組みが広がればいい」。6月中旬、出張で東京を訪れた静岡市の男性(66)はこう話しました。

 現在、東京23区や京都市など全国16地域(18日時点)で運行しているライドシェアは、タクシー会社の運行管理の下、普通免許を持つ一般ドライバーが自家用車を使い有償で乗客を送迎する仕組みです。これまでは、タクシー運転手に必要な2種免許を持たない個人が有償で運ぶことはナンバープレートの色から「白タク」と呼ばれ、道路運送法で原則禁止されていました。

 政府が解禁に踏み切った背景には、タクシー運転手が不足していることがあります。高齢化や新型コロナウイルスの感染拡大で運転手の数は2020年3月末時点の28・2万人から24年3月末には約17%減の23・5万人まで減少しました。政府はそこで、高齢者や観光客らの移動手段を確保するため、タクシーが不足する地域や曜日、時間帯に限って解禁したのです。

 京都市でタクシー事業を手掛ける「エムケイホールディングス」の東真一・経営企画部次長(47)も「コロナ禍前に比べて運転手が1割減った」と明かし、ライドシェア参入のきっかけとなったとしています。同市の別のタクシー会社の担当者も「運転手が少ない時間帯もあり、人手不足解消になる」と歓迎しています。

 ライドシェアは、配車から支払いまでアプリだけで行うことも特徴です。予約時にルートや運賃が確定するため、乗客にとっては運賃やルートの透明性が高くなります。運賃はタクシーと同水準です。懸念される安全対策にも取り組んでいます。米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズの日本法人「ウーバージャパン」(東京)は、乗客とドライバーの相互評価やルートの異常を検知する仕組みを導入しています。

 副業など多様な働き方が広がる中、一般ドライバーにとっては隙間時間を使って収入を増やせるメリットがあります。さいたま市のタクシー会社に登録した武藤俊二さん(58)は「平日は都内で職業訓練を受けており、土日を中心に40組以上を運んだ。生活の足しになればいい」と話します。

 タクシー会社以外も参入する全面解禁は、自民党の菅前首相や小泉進次郎・元環境相ら有力政治家が主張しています。「全面解禁されれば価格競争が起き、サービスも進化する」(上山信一慶応大名誉教授)と利便性向上に期待する声も出ており、政府は新たな法整備を含め、期限を設けずに議論を進める方針です。

[B論]運転や接客に不安…全面解禁 慎重論も

 6月上旬からライドシェアが始まった千葉市では原則、土曜、日曜の午前0~3時台に限り、タクシー不足を補う形で運行されています。まだ利用したことがない同市の会社員女性(37)に理由を聞くと、「海外では犯罪に巻き込まれる事例もあったと聞くので不安がある」と話します。

 ライドシェアの運転手は2種免許は必要ありませんが、タクシー会社による講習や適性診断を受ける必要があります。500人以上が運転手として在籍している日本交通では1人あたり10時間の教育を行っています。採用の際には面談を行い、過去の病歴や服薬状況によっては採用を見送るケースもあるといいます。

 車内を会社が貸与する通信型のドライブレコーダーでリアルタイムで確認できるようにしているほか、専用アプリでオンラインによる点呼やアルコールチェックなども行っています。

 ただ、実際にウーバーのアプリを使ってライドシェアを利用した人は、東京で85%、京都で95%以上が海外からの観光客でした。4月の運用開始から大きなトラブルは報告されていませんが、日本ではまだなじみが薄いことに加え、運転技術や安全面の不安もあるようです。基本はカーナビに頼るため、道路事情に詳しくない場合もあります。

 乗車中の性犯罪被害の懸念も出ています。先の通常国会では、学校や保育所など、子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」創設を盛り込んだ「こども性暴力防止法」が成立しました。ライドシェアの規制緩和を検討する有識者からは、日本版DBSのように事前にチェックする仕組みを求める声も上がりました。

 全国ハイヤー・タクシー連合会によると、運転手数は近年減少傾向にありましたが、今年に入り回復に転じました。東京ハイヤー・タクシー協会などのまとめでは、東京都のタクシー運転手の2023年の平均年収は586万円と、都内の全産業平均(581万円)を初めて上回りました。給料の上昇に伴い、都内の運転手は5月に約600人増えています。タクシーが不足する過疎地や観光地などではライドシェアの期待が高まる一方、東京のように需給が合わない地域もあります。業界団体は全面解禁には反対する立場です。

 同連合会の川鍋一朗会長は、基本はタクシーが担い、需要のピーク時などにライドシェアで補う今の仕組みに手応えを感じています。「日本版ライドシェアは日本の実情に合致して進化してきた。海外のように全面解禁する必要はない」と指摘しています。

海外では広く定着

 海外では、ライドシェアが広く普及しており、移動手段としても定着しています。日本に対しても「全面解禁」に向け、さらなる規制緩和を求める声も出ています。

 配車アプリを運営する「ウーバージャパン」の調査によると、経済協力開発機構(OECD)に加盟する38か国中、米国や英国など25か国で、何らかの形でライドシェアが認められていました。国土交通省の調査では、14か国で自家用車で乗客を送迎していました。

 運営方法は大きく二つに分かれています。米国やカナダが採用しているのは、ウーバーなどサービスを提供する事業者に運転手や運行の管理を義務付けるものです。一方、英国やフランスなどは個人タクシーの派生型で、当局が運転手に登録を義務付ける方法です。

 規制や管理方法は異なりますが、短時間勤務が可能なため、時間や場所などの需要の増減や変化にも対応しやすいメリットがあります。自分の都合のいい時間帯に柔軟に働けるために、副業としても広く利用されています。

 利用者がアプリで目的地を入力するのは日本と同じですが、海外では希望する車両などを選択できるのが一般的です。料金が事前に決まるため、日本と同様に運転手との交渉も不要です。

 海外の金融大手の調査では、世界のライドシェア市場規模は2017年の360億ドル(約5.6兆円)から、30年には8倍となる2850億ドル(約44兆円)に成長するとの予測もあります。利用者は世界人口の13%に迫ると試算しています。(政治部 松本健太朗、阿部雄太)

[情報的健康キーワード]フェイク画像

 スマホの画面に表示されている意見が、多くの人々に支持されているものなのか、それとも一部の人が声高に叫んでいるにすぎないのか――。それを知っておくことは、社会の動きを捉えるためにとても大切です。しかし、デジタル言論空間では、こうした「規模感」は見えづらくなっています。

 SNSでは、同じ人物が複数のアカウントを持つことができ、「ボット」と呼ばれる自動投稿プログラムを使用した大量投稿が行われています。少数の人が、まるで多くの人々が支持しているかのように特定の意見を拡散することもできます。

 このように生み出された実体のない集団は「フェイク群衆」と呼ばれています。SNSでは、同じテーマに関する投稿で盛り上がることがよくありますが、「一部の人だけが騒いでいるのかもしれない」と一歩引いた、冷静な目で見ることも必要です。

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