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兵庫知事の疑惑 告発者をなぜ守れなかった

読売新聞 / 2024年7月20日 5時0分

 知事の不正疑惑を ただす内部告発を受けながら、調査を尽くさずに告発者を処分した兵庫県の対応には大きな疑問が残る。公益通報制度を揺るがしかねない問題だ。

 兵庫県の斎藤元彦知事が、県幹部だった男性職員から不正疑惑を告発された。職員は3月、報道機関などへ告発文書を郵送し、4月には公益通報制度に基づき、県の窓口にも同じ内容を通報した。

 告発は、知事の物品授受やパワーハラスメントなど7項目に及ぶ。これに対して知事は、すぐに告発の内容を「ウソ八百」と否定し、職員を幹部職から外した。

 また県は、独自の内部調査の結果だとして文書内容を事実無根だと判断し、職員を停職3か月の懲戒処分にした。職員は7月、死亡した。自殺だとみられている。

 公益通報者保護法は、通報を理由とした、通報者への不利益な取り扱いを禁じている。県は本来、職員を公益通報者として扱い、保護すべきだった。県の対応は保護法に反していた疑いがあり、不適切だったと言うほかない。

 職員が処分を受けた後、県議会は、県の調査では中立性が保たれないとして、強い調査権限を持つ百条委員会を設置した。

 一方、県も近く、知事の不正疑惑を改めて調査する第三者機関を設けるという。告発内容をしっかり精査することはもちろん、職員を一方的に処分した県の対応についても検証する必要がある。

 都道府県はすべて公益通報窓口を設置している。ただ、窓口を弁護士事務所などの外部にも置いているのは29都道府県にとどまり、兵庫県も置いていない。市区町村に至っては、通報窓口がないところが3割近くにも上っている。

 行政機関は、企業の不正を告発する際の通報窓口としても役割を期待されている。通報者が役所の内部か外部かを問わず、早急に窓口の整備を進めねばならない。

 公益通報を巡るトラブルは少なくない。和歌山市では、公金の不正使用を告発した男性職員が、その通報によって懲戒処分を受けた職員と同じフロアで働かされ、その後、自殺している。

 鹿児島県警では今年、前生活安全部長が内部文書を 漏洩 ろうえいしたとして国家公務員法(守秘義務)違反で起訴された。前部長は、漏洩ではなく、「公益通報だった」と無罪を主張する方針だ。

 公益通報は不正の発見と是正につながる。制度の意味と必要性を、首長を含め、改めて認識し直さなければならない。

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