AIで競技力強化、7mジャンプもコート上の動きも精密分析…選手「修正点が一目でわかる」
読売新聞 / 2024年7月22日 15時26分
[超人の科学]
己の技と肉体を極限まで磨き上げたトップアスリートの祭典、パリ五輪の開幕が26日に迫った。驚異的なパフォーマンスをさらに高める最新テクノロジーが次々と登場し、様変わりした選手強化の最前線をリポートする。
社会に急速に普及する人工知能(AI)は、パリ五輪という世界最高峰の舞台に挑む選手たちにも欠かせない技術となっている。
5月下旬、五輪選手らの練習拠点になっている国のハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC、東京都北区)。トランポリンの練習場では、日本代表の西岡
西岡は練習を終えるやいなや、近くに置かれていたパソコンに向かった。画面に映るのは、AIによる姿勢分析の結果だ。撮影動画から西岡の骨格情報を捉え、跳躍の高さ、姿勢を変えたタイミング、身体の軌跡などがグラフや数値としてわずか数分で表示されていた。
「自分の演技の傾向や修正すべき点がぱっと一目で分かる」。西岡はそう語る。
トランポリンは10回連続で跳んで技を披露し、〈1〉跳躍の高さ〈2〉姿勢の美しさ〈3〉技の難しさ〈4〉着地の正確さ――の合計点を競う。西岡は2021年の世界選手権銀メダリストで、パリ五輪では3回宙返り系の技を六つ組み込んだ高難度の演技に挑む予定だ。
世界トップレベルの西岡だが「課題は跳躍の高さの不安定さ」と自己分析する。特に演技終盤は、疲労から跳躍が低くなる傾向がある。
跳躍は最高7メートル超にも及ぶが、1回あたりの時間はわずか2秒。その間、伸身や前屈、抱え込みなど、様々な動作を盛り込む。滞空時間が少ないと余裕がなくなり、ミスにつながる。
いかに体力を温存しながら跳び続けるか。求められるのは、無駄や力みのない動作だ。1センチ刻みで跳躍の高さをはじきだすAIは、技を精密に分析し、改善点をあぶり出す強い味方となる。「まずは1本目を意識し、高さのグラフの下がりを滑らかに保たないと」。西岡は、静かに闘志を燃やす。
精度、大幅アップ
AIを開発した情報通信企業インテック(富山市)の神田
同社は元々、病理検査用の画像分析などを行うAIを開発してきた。日本代表の公式スポンサーになった同社が19年、トランポリン用AIの開発を開始。演技画像約8500枚をAIに学習させ、当初は4割以下だった検出精度を95%超まで向上させ、昨年12月からHPSCに導入された。
開発に協力した日本体操協会女子強化本部長の丸山章子(51)は「感覚で話していた技術的改善点を目で見られるようになった」と指導者としての利点を話す。
日本勢の五輪での最高順位は12年ロンドン五輪などの4位。パリは悲願のメダルがかかる大舞台で、西岡は「守りに入らずどれだけ攻めることができるのか。トランポリンで日本人がメダルを取った世界を見せたい」と決意をみなぎらせる。
AIは、世界の壁を突破し、新たな歴史を刻むための鍵となるかもしれない。
試合映像から能力数値化
AIは対人競技にも導入され始めた。国立スポーツ科学センター(JISS)などが昨年開発したAIは、バドミントン選手の試合中の位置データから軌跡や速度、走行距離などを自動計算し、能力を数値化できる。
開発を主導したJISS研究員の相原伸平(35)は「選手の体に測定機器をつけることなく、カメラ1台で分析可能だ」と説明する。
女子シングルスの日本代表選手が出場したある国際大会では、分析した大半の試合で走行距離が1・2キロ・メートルを超えていた。一方、海外の有力選手は1・2キロ超の試合はなく、相手をうまく動かす試合巧者ぶりがデータでわかった。
日本バドミントン協会は、AIによる分析をさらに進め、パリ以降の本格活用を目指す。相原は「AIは東京五輪以降、本格的に使われ始めた。他競技にも展開したい」と意気込む。(敬称略)(科学部 船越翔)
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