20分前に不審者察知、なぜトランプ氏銃撃は防げなかったか…警備当局に責任追及の声
読売新聞 / 2024年7月21日 9時0分
【ニューヨーク=金子靖志】米東部ペンシルベニア州で共和党のトランプ前大統領が演説中に銃撃された事件から20日で1週間となった。暗殺は未遂に終わったものの、不審者の存在を少なくとも約20分前に察知しながら狙撃を許した警備当局の責任を追及する声が上がっている。動機の解明は難航している。
直前 見失う
不審者がいる――。米ABCテレビなどによると、警備当局は13日午後5時52分、同州バトラーの演説会場の壇上から約140メートル離れた建物近くで距離計を持つトーマス・マシュー・クルックス容疑者(20)とみられる不審者を見つけて警戒対象にしたが、その後見失っていた。
会場の外にある建物の屋根は傾斜がきつく、大統領警護隊(シークレットサービス)の狙撃手からは「死角」となり、確認に時間がかかった可能性も指摘される。ABCテレビは、トランプ氏の演説開始から2分後の午後6時6分、狙撃手が容疑者の存在を確認し、建物周辺で警備に当たる警官に伝えるために持ち場を離れたと伝えた。
その数分後、銃声が響き、トランプ氏は右耳を負傷し、観覧席にいた男性1人が死亡、2人が重傷を負った。容疑者は射殺された。
長官「警備は地元警察が担当」
事前に不審者を見つけながら銃撃を防げなかったとして、シークレットサービスのキンバリー・チートル長官への批判が高まっている。チートル氏はバイデン大統領の副大統領時代の警護官を経て、2022年に任命された人物だ。
チートル氏は15日の米ABCテレビのインタビューで、建物の警備は「地元警察が担当していた」と主張した。シークレットサービスの人員も、ワシントンで11日まで開かれていた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の警備のあおりで不足していたという。
しかし、共和党側は辞任要求を強めており、22日に下院監視委員会の公聴会を開き、警護の実態解明と責任追及を本格化させる構えだ。国土安全保障省もシークレットサービスの調査に乗り出している。
計画的犯行
米連邦捜査局(FBI)は犯行の動機を解明しようと、19日までに200人以上を事情聴取したほか、容疑者の携帯電話の解析や約1万4000枚の画像を調べた。過去の銃乱射事件の犯人に関する情報をインターネットで検索した履歴などは確認されたが、動機につながる手がかりは見つかっていない模様だ。
射撃に強い関心があり、高校時代にはいじめられていたという容疑者。米CNNテレビは19日、「捜査当局は政治的な動機というよりも、身近にいる知名度の高い標的を攻撃することにあったのではないかと推測している」と報じた。
ただ、犯行は計画的だ。容疑者はトランプ氏の集会日程を調べた後、犯行の数日前に会場を下見し、前日には射撃場で練習。当日は勤務先の介護施設の上司に「やることがある」と伝えて欠勤した。射撃場に行きたいと言って父親からライフル銃を借り、50発の弾薬とはしごを購入し、会場に向かった。
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